目次
開催案内
日時
2018年7月3日(火曜日)午後3時から
場所
理学部6号館401講義室
⇒アクセス 建物配置図(北部構内)【4】の建物
プログラム
15:00〜 | ティータイム |
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15:15~
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「量子コンピュータ:情報と物理、基礎と応用、理学と工学の交差点」 藤井 啓祐氏(京都大学大学院理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻 特定准教授) 最も基本的な物理法則である量子力学は、半導体、MRI(NMR)、レーザーなど我々が日常で利用している技術を影で支えている。このような量子力学を表舞台へと引っ張り出し、コンピュータの原理として積極的に利用するマシンが量子コンピュータである。 量子コンピュータは、素因数分解に代表される重要な数学的問題や、材料開発や化学物質の設計、そして機械学習などにその威力が発揮されることが期待されている。Google, IBM, Intel, Microsoft などの巨大 IT 企業に加え、多くのベンチャー企業が立ち上がりつつあり、世界各国で産官学を巻き込んだ研究開発競争が始まっている。 また、量子コンピュータの実現のために登場した概念や手法が、高エネルギー物理や物性物理学など他の物理分野へ応用され始めており、応用・基礎の両面から量子コンピュータ研究は面白い局面を迎えている。 本講演では、量子コンピュータの歴史と現在の世界的状況、量子コンピュータの仕組みや得意な領域、量子コンピュータと基礎物理との接点、量子コンピュータ研究の最近の動向について紹介する。(講演終了後、質疑応答) |
16:30~ |
「沈み込み帯で活動する水の挙動の理解へ:青色片岩は有馬型熱水の起源」 沈みこむプレートから放出されるH2Oを主体とする深部流体は岩石の物性を大きく変化させ、プレート間地震や島孤火山活動を誘発するため、深部流体活動の実態解明は21世紀初頭から大きな注目を集めています。 私達は過去の沈み込み帯の地下15-150kmで形成された岩石に含まれる含水珪酸塩鉱物の消長や深部流体そのものである流体包有物を素材として、地下深部流体活動の実態解明に取り組んでいます。 本講演では、最近の成果について紹介したいと思います。(講演終了後、質疑応答) |
17:45~ |
懇親会 *学生無料 / 教職員1,000円程度 |
備考
*理学部・理学研究科の学生・教職員が対象ですが、京都大学の方ならどなたでも聴講できます。申し込み不要。
MACSは、昨年10月から理研iTHEMS(理化学研究所 数理創造プログラム)と連携を始めました。
7月2日〜4日は、MACSコロキウムに加えて、理研iTHEMSに関連する2つのイベントが開催される「理研京大ウィーク」です。多くの方のご参加をお待ちしています!
- iTHEMS コロキウム (2023.6.2リンク先ページ公開終了につきリンク削除)
7月2日(月)15:00〜16:30(SUURI-COOLで中継) - iCeMS-iTHEMS Joint Workshop on Interdisciplinary Biology
7月4日(水)SUURI-COOLで開催
*SUURI-COOLは北部総合教育研究棟2階です。
⇒ アクセス 建物配置図(北部構内)【13】の建物
講演動画
『沈み込み帯で活動する水の挙動の理解へ:青色片岩は有馬型熱水の起源』平島 崇男 氏
開催報告
第5回MACSコロキウムでは、京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻の藤井啓祐特定准教授と、京都大学理学研究科地球惑星科学専攻の平島崇男教授のお二方に講演していただきました。
藤井啓祐さんには「量子コンピュータ:情報と物理、基礎と応用、理学と工学の交差点」というタイトルで、量子コンピュータについて研究の歴史から原理、他分野とのつながりや現在まで幅広くお話しいただきました。前半は量子コンピュータ研究の歴史に始まり、量子コンピュータの原理と理論的にできることについてご解説いただきました。例として、歴史的にも量子コンピュータ研究の第一期ブームの火付け役といえる素因数分解を行うショアのアルゴリズムを通じて、「量子ビットの内部状態である複素数値ベクトルへユニタリ作用素を作用させて、正答の確率を増加させる」という原理をご紹介いただきました。
後半は量子コンピュータの課題とご自身の研究についてお話しいただきました。ゆくゆくは種々の問題で活躍するであろうと予測される量子コンピュータですが、現状様々な困難があり、産学入り混じっての研究開発が行われています。現在のコンピュータとの競争を強いられている面も紹介しつつ、量子コンピュータのシミュレーションを用いたご自身の研究、他分野とのつながりについてもご紹介いただきました。
ここではごく一部の話題を紹介するにとどめていますが、実際の講演では非常に広範な話題が触れられています。またそれぞれの話題に興味を持った参加者向けに、多くの解説記事をご紹介いただいていました。質疑応答や懇親会では、分野への関心の高さを裏付けるように活発に議論が行われました。(文責 石塚裕大)
続いて、京都大学理学研究科地球惑星科学専攻の平島崇男教授に「沈み込み帯で活動する水の挙動の理解へ:青色片岩は有馬型熱水の起源」というタイトルでご講演して頂きました。講演の前半では、平島さんが長年研究されてきた超高圧変成岩(地殻物質が深さ100-140km以深の所で変性し、再度地表まで上昇したもの)に関する話をして頂きました。1980年代前半までは、軽い地殻物質はマントル深部には潜らないと考えられていたそうです。しかし、大陸と大陸とが衝突するようなエリアで、高圧相で形成されるコース石やダイヤモンドが含まれた変成岩(=超高圧変成岩)が次々と見つかったことから、地殻物質が100km以深まで沈み込み、再び地表まで戻るという大規模な物質循環が普遍的に起こっていることが明らかになりました。
続いて講演の後半では、岩石学の分野横断型研究として始まった、岩石に含まれる水成分(含水珪酸鉱物や流体含有物)に注目した、地下深部流体の活動実態解明について説明して頂きました。そして、成果の一部として、火山地帯起因でない熱水である有馬型熱水の成分が、四国や和歌山の三波川変生帯で形成された変成岩の青色片岩(流体含有物)の成分と類似していることについて話して頂きました。
講演は、岩石の展示や平島さんの実体験エピソードを交えつつ進行し、質疑応答や懇親会の時間ではフィールドワークの多彩な現場エピソードや成果についてさまざまな議論が行われました。(文責 高瀬悠太)