目次


第24回MACSコロキウム

 

開催案内

日時

2023年11月20日(月)14:45〜18:00

 

開催場所

北部総合教育研究棟 益川ホール (対面のみ)

 

参加登録

https://forms.gle/5JE4xVnPVyUshcH98

 

 

プログラム

14:45〜15:00

ティータイムディスカッション

15:00~ 16:00

講演1

「金属と分子が織りなすガラスの新物質科学」

堀毛 悟史 博士

京都大学大学院理学研究科化学専攻 教授

 

三大材料と言われるセラミックス、金属、有機高分子はいずれもガラス相を形成し、我々の生活や産業を支えています。結晶と異なりガラスはランダムな分子構造を持つため、物質設計や物性の理解は未だ大きな課題です。本講演では、金属と分子を組み合わせて作る新しいガラスの研究について紹介します。どうやってガラスの構造を設計し、合成するのか、また金属と分子が作るユニークなガラスの分子構造と機能を解説します。

16:15〜17:15

講演2

「位置情報の最適コーディングデザインと器官形態形成動態の原型を捉えるための時空座標系」

森下 喜弘 博士

理化学研究所生命機能科学研究センター チームリーダー

 

器官発生過程における法則を知りたい。できればそれを数学的に表現できたら嬉しいし、その法則が種間や器官間で共通であれば面白い。というような気持ちで、実験と理論の境界あたりで発生生物学の研究をしている。このセミナーでは、発生組織の中の空間情報の表現・コーディング問題に関する研究と、(大きさや発生速度が異なる)相同器官の形態形成ダイナミクスを種間で直接かつ定量的に比較するための時空座標系の提案、および生物データに適用することで種に依存しないダイナミクス(原型らしきもの)の存在を示唆する結果について紹介する。

17:15~18:00

継続討論会 コロキウム講演者との自由な雑談

  

備考

◎本コロキウムは理学部・理学研究科の学生・教職員が対象ですが、京都大学・理化学研究所に在籍されている方はどなたでもご参加いただけます。
◎学内教育プログラムに関するイベントであるため、学外・一般の方の登録は原則不可としております。ご登録いただきましてもリストより削除させていただくことがあります。
◎問い合わせ先:macs * sci.kyoto-u.ac.jp(*を@に変えてください)


開催報告

 第24回MACSコロキウムの前半は、京都大学大学院理学研究科化学専攻の堀毛悟史博士に「金属と分子が織りなすガラスの新物質科学」というタイトルで講演していただきました。

 講演は金属−有機構造体(MOF)の紹介から始まりました。MOFとは金属イオンと有機化合物の配位結合を利用して多孔性構造を形成する材料のことです。例えば、古くから染料として用いられてきたプルシアンブルーがあり、これは鉄イオンとシアノ基から成ります。他にも、酢酸亜鉛とテレフタル酸から得られるMOFなどがあります。修士課程在学時には、MOFの結晶中で1次元ラダー構造をとる酸素分子を直接観察できるようになり、衝撃を受けたそうです。

 次に、一般にはガラス化させることが難しいMOFをガラス化させる研究が紹介されました。ガラスは準安定な不規則構造をとっており、通常は結晶を融解した後に急冷するメルトクエンチ法で作られます。しかし、MOFは加熱すると液体状態になる前に分解してしまうものが多く、ガラス化が難しかったそうです。そこで、シリカガラスが四面体構造を最小単位にしていることに着目し、四面体構造を最小単位にもつMOFを利用することで、MOFの融解とガラス化に成功したそうです。

 続いて、加熱すると分解してしまうためメルトクエンチ法が利用できないMOFをガラス化させる研究が紹介されました。1つ目の手法は食品のガラス化にも使われているすりつぶしです。プルシアンブルーをすりつぶすことでガラス化に成功したそうです。得られたガラスを様々な方法で解析することで、結晶の周期構造が一部残っていることや、ガラス化しても電気伝導性を保つことや、高分子とセラミックスの中間の機械的特性を持つことが分かったそうです。2つ目の手法は結晶の脱水処理です。アクア金属錯体に対して脱水処理をすることで、相互貫入構造を持つ特殊なガラスの作成に成功したそうです。

 最後に、MOF融液に関する研究が紹介されました。二次元層状の結晶構造を持つMOFは融解できるのにも関わらず、融液を冷却してもガラス化しないそうです。融液の再結晶化を詳細に調べたところ、結晶化は融液中でランダムに発生しており、一次元ロッド状の結晶成長であることが分かったそうです。また、一次元鎖状の結晶構造を持つMOFを融解させたところ、融液でも一次元鎖状構造を持つことが分かったそうです。特徴的な構造を持つMOFをガラス化させることで、ガラスネットワークの構造制御へ繋げていきたいという展望で講演は締めくくられました。

 講演後の質疑応答では、すりつぶしの具体的なやり方や、ガラス化させることの意義についての議論などで大いに盛り上がりました。

(文責:伊丹將人)