目次
開催案内
日時
2020年7月17日(金)午後3時から
講義形式
オンライン配信(Zoom)
本コロキウムのZoomIDとそのパスワードは開催時期が近くなりましたら, KULASISでお知らせします.
またMACS スタディグループ(SG)仮登録の以下のホームページから 事前登録していただけると確実にその登録メールアドレスにお送りします.
https://forms.gle/BBmeC8y1ZLiA7iEfA (Google フォーム)
※SG参加対象:
主に理学研究科大学院生,理学部3,4回生
それ以外の学生さんの登録も可能ですが, 参加希望者多数の場合は調整の可能性があります.
今年度のSGの情報は以下のHPから得ることができますので参考にしてください.
http://www.sci.kyoto-u.ac.jp/academics/programs/macs/sg/sg2020/
プログラム
15:00〜16:00 | 講演1 「トポロジカルデータ解析:理論と応用」 平岡 裕章 博士(京都大学 高等研究院 教授、理化学研究所 革新知能統合研究センター チームリーダー) この講演ではトポロジカルデータ解析(TDA)の紹介を行う.TDAではパーシステントホモロジーやMapperと呼ばれる数学的手法が良く知られているが,これらは表現論,確率論,機械学習,最適輸送などと関連しながら発展している.講演ではTDAの歴史的背景や上に挙げた様々な数学的な広がりを解説するとともに,生命科学や材料科学を中心に,実際にTDAが応用の現場で使われている例も紹介する.トポロジーに基礎をおく新たな応用数学手法としての魅力を伝えたい. |
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16:15~17:15
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2020年度MACS学生説明会 MACSスタディグループ2020(順不同)
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17:30~18:30 |
講演2 第一回目ノーベル物理学賞はX線の発見によりレントゲンに送られたという例を引くまでもなく、現代医学の進歩と数物系科学のブレークスルーは密接な関係にあります。近年、生命を究極の非平衡解放系としてとらえようとする学問的流れが生まれてきましたが、単純化した人工モデルや確立された細胞株を用いた研究にとどまりがちです。本コロキウムでは、精密計測と数理解析を用いて臨床医学の重要課題に切り込む取組の現状と、その将来への展望をご紹介します。 |
備考 |
◎京都大学の学生・教職員はどなたでもご参加いただけます。申し込み不要。 ◎問い合わせ先:macs@sci.kyoto-u.ac.jp |
講演動画
『トポロジカルデータ解析:理論と応用』平岡 裕章 氏
『臨床医学の課題に切り込む数物科学』田中 求氏
開催報告
2020年度第一回目のコロキウムでは、はじめに平岡裕章博士(京都大学高等研究院教授、理化学研究所革新知能統合研究センターチームリーダー)に、「トポロジカルデータ解析:理論と応用」というタイトルでご講演いただきました。講演では、ご自身が専門としているトポロジカルデータ解析(TDA)の2つの代表的な手法について、原理、実例、応用などを交えてご解説いただきました。
前半はパーシステント・ホモロジーについての解説でした。空間にあるデータ点から、各点の周りに同じ大きさの球を描いて、その球がどう交わっているかでチェック複体と呼ばれる図形を作ります。この図形のホモロジーと呼ばれる量を計算することで、(球の半径に依存する)図形に空いた穴の情報を取り出すことができます。球の半径を大きくしていったとき、それぞれの穴がいつできていつ消えるかを見るのがパーシステント・ホモロジーの基本的なアイデアです。講演では図を交えた数学的な説明とともに、ガラスと液体の分子配置についての応用などが紹介されました。
後半は Mapper についてでした。空間にあるデータをある方向に沿って厚みのある輪切りにして、それぞれのスライスでクラスタリングを行います。そして隣接するスライスでどのクラスターとクラスターがつながっているかを考えることで、データの空間分布の幾何的な特徴や時間発展を取り出そうというのが Mapper の基本的なアイデアです。パーシステント・ホモロジーとの比較や、実際には各スライスの間に重なりを持たせることなどの注意点、会社の特許に関するデータについて Mapper を適用したときの各企業の独自性・発展性の分析などの応用例が紹介されました。
講演ではさらにこれら二つの概念のソフトウェア開発状況、トポロジカルデータ解析の学会やオンラインセミナーについてもご紹介いただきました。さらに折に触れて興味を持った方向けの相談窓口などもご紹介いただきました。
(文責・石塚裕大)
ハイデルベルク大学所属の田中求さんに、「臨床医学の課題に取り組む数物科学」という題目でお話しいただきました。
前半は、ハイデルベルグ大学では世界に先駆けて循環血由来の幹細胞移植による急性骨髄性白血病(AML)治療に成功された歴史を紹介していただくことから始まりました。田中さんのグループの最近の研究では、AML治療に重要な「健常幹細胞と白血病幹細胞の骨髄への接着強度」を精密測定し、それらの差異を定量化しました。また、そこで得られた細胞の動的表現型を記述する界面ダイナミクスの数理モデルと臨床治療で使用される薬剤との対応関係を明らかにしました。
後半の内容は、ヒト角膜再生医療における新たな診断基準「物理的バイオマーカー」についてでした。ヒト角膜再生医療においては、治療に使用する角膜の培養細胞の品質管理が重要でありますが、フローサイトメトリーを使った従来の方法による管理は十分ではありませんでした。田中さんのグループの最近の研究では、コロイド分散型など多体粒子系の基礎的な統計量である動径分布関数に着目することにより、低品質細胞と高品質細胞を識別する非侵襲的方法を開発しました。また、この方法を患者の予後予測に応用可能性についても議論されていました。
現在は、このコロキウムのもう一人の講師である平岡さんと共同でパーシステントホモロジーを使った角膜細胞の評価をはじめとした複数の分野が交わる共同研究を進めておられますす。
(文責:太田洋輝)