西村 理沙

 

子宮頸がんワクチンは全世界120 か国で承認・接種されており、世界的には有効性と安全性が広く認められています。日本でも2009 年に女性の接種が承認されましたが、2013 年、原因不明の有害事象が報告され、厚生労働省は接種の呼びかけを中止しました。

 

有害事象とは、ワクチン接種後、体に何らかの異変が起こることを言います。ワクチンが原因ではない症状も報告されるため、一概に副作用だとは言えません。日本のメディアでは体の痛みやけいれんを訴える症状などが副作用のように取り上げられていましたが、本当に副作用だといえる科学的な根拠がないことが、名古屋市や諸外国の調査で指摘されています。

 

原因と結果が論理的に結び付き、誰もが信頼できる客観的な情報でなければ、科学的ではありません。科学的な検証を示すことなくワクチンの安全性を否定するような報道によって、厚生労働省はいまだに「有害事象は心因性のもの」と認めながらもワクチンを推奨できていません。世界保健機構(WHO)はそのような日本政府の姿勢を明確に批判しました。

 

因果関係が無いことを証明できないのも、科学の側面です。ワクチンが絶対に安全だとは誰も言い切れません。私たちは与えられた情報が科学的か否か考える必要があります。それが客観的に信頼できるかどうかの基準になるからです。また、人々が偏った主張に惑わされないために科学者がすべきことは、科学的に裏付けられた情報を平等に公開、発信すること、その情報から得られる知見をわかりやすく説明してできるだけ多くの人に聞いてもらうことでしょう。