竹村 毬乃
ある研究が科学として認められるのかどうか。これは科学者にとって大きな問題である。実は、科学には明確な定義がない。今いわゆる科学と呼ばれているものは経験的に正しいと判断されてきたものの積み重ねなので、科学者はその上に自分の研究を上乗せできるかどうかにかかっている。
科学は、漠然と皆が正しいと思ったから積み重ねられてきたわけではなく、認められる判断基準を満たしたもので形作られてきた。だから科学の堅城は容易には崩れない。その基準のキーワードは、因果関係、対照、検証の3 つであると考える。相関関係と因果関係は混同しがちなので、違いに敏感でなくてはならない。ある調査や実験で集めたデータの妥当性を証明するためには、対照と比較することが重要である。また同業者の目から見てもらい、検証できる状態にしておくことも大切な要素である。
反例として、ニセ科学の一例となったマイナスイオンを考えてみる。一時期マイナスイオンを浴びると癒されるとか免疫力が高まるといった言説が流布した。元は森林や滝に行くと気持ちが良いことと、その周辺にマイナスイオンが多いことから健康効果を謳ったのが始まりとされる。しかしイオンが体内で何らかの働きをして良い影響を及ぼすという因果関係を示したデータはない。科学的でない言説だったがメーカーはこぞって商品開発をし、消費者も踊らされてマイナスイオン家電を買い求めた。
冒頭で科学についての認識が科学者にとって大事だと述べたが、私たちにとっても重要なことだ。ニセ科学に振り回されて損をしたり騙されないために、科学のようなものに出会った時は一度疑ってみる必要がある。