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第3回

長谷:はい。私の専門は、学問の名前で言うと植物生理学です。植物生理学というのは、知っている人は知っていますが、知らない人は、いったい植物と生理って結びつくんだろうかと思われるかもしれません。もう少し平たく言うと、植物が生きているその仕組みを知ろうとする学問ということになります。少し例を挙げますと、例えば、もう100年以上前から知られている、植物が光に向けて茎を曲げるという現象がどういう仕組みで起こるか。あるいは、これもよく言われる例ですが、植物がCO2と水と光で光合成をする仕組みはどうなっているのか。あるいは、植物が季節を感じて花を咲かせる仕組みはどうなっているのか。根本的にはそういう疑問を解いていこうという学問だと思っています。
もうひとつみなさんに申し上げたいのは、じゃあ仕組みをどうやって理解するかということです。これについては実は、生物学ではここ数十年で、ゲノムというものがわかるというような非常に大きな発展を遂げました。その結果として、やっぱり生物のすべての現象は基本的に分子、細胞といったミクロのレベルで理解できるということがどんどんどんどん明らかになってきました。今、ゲノムということを言いましたが、生物学は昔は自分の専門の材料をいろいろ一人でいじってどうこうするようなやり方もあったわけですが、今は一部で、ビッグサイエンスというほどではないですが、ヒトのゲノムを大勢の人が集まって決めてしまおうというような動きも出てきています。そのおかげで、遺伝子という一つの原点みたいなところを遣いながら調べて行く技術というのが非常に発達しました。そこで、遺伝子操作を中心に細胞まで見て行く、あるいはミクロの方で言えばタンパク分子などの分子を見て行く。ここ何年か、そういう手法を使って植物の生きている仕組みを探っています。
 もう少し具体的に言うと、私が今、というか大分もう長い間興味を持ってるのが、植物の光応答っていう現象です。ちょっと動物の光感覚とは違って、植物は、基本的にすべての細胞が光を感じるタンパク質を複数種類持っています。だから植物は体中でじわっと光を感じているということになります。そういう光を感じるタンパク分子が細胞の中で動き回って、さらにそれが細胞の中の核という場所でその遺伝子に作用します。そうすると、またその遺伝子の発現が変化して、それがまた二次的に伝わって行きます。そういうところの仕組みを探るような研究をしています。

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nagatani

長谷あきら 教授

三輪:どうもありがとうございます。それでは、みなさんがそれぞれの専門をやり始めるまでの話をしていただきたいと思います。大学に入った頃やもっと前のどこかの段階で、学校の授業だけじゃないかもしれないけれど、何かに感激したとか、きっかけになったこととか、いろいろあったんじゃないかと思いますので。


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