京都大学大学院理学研究科長・理学部長
田中耕一郎

 京都大学理学研究科・理学部のHP にお越しくださいましてありがとうございます。

 京都大学理学研究科・理学部は、1897年の京都帝国大学の設立の翌年に理工科大学の中に数学科、物理学科、化学科が設立されたのを起源としています。1919年には理学部が設立され、宇宙物理学科、地球物理学科、動物学科、植物学科、地質学鉱物学科が追加されました。従って、理学部は100年以上の歴史を持っていることになります。第二次世界大戦後の1953年に大学院が新設され、課程博士の教育が始まりました。1994年から1995年にかけて、理学部の学科を理学科1学科にし、大学院を数学・数理解析、物理学・宇宙物理学、地球惑星科学、化学、生物科学の5つの専攻とする体制の変更を行い、現在に至っています。

  理学は、自然現象に関する真理の探究を行う学問であり、自然や事物の本質について考えを巡らし、その真理を合理的に明らかにすることを目指しています。世界の有様を大きく変えるような科学上の発見の多くは、自然界の真理に対する純粋な好奇心に基づく研究から生まれてきました。京都大学理学研究科・理学部では、研究者一人一人の自由な発想に基づく研究を尊重し、時流にとらわれない独自性の高い研究を進めてきました。所属するファカルティスタッフは皆、事物の本性や本質を見つけることに無常の喜びと幸せを感じています。このような、好奇心旺盛で個性的かつ多才多様な教員陣こそが、我々京都大学理学研究科・理学部の最も誇りとするものです。100年の歴史の中でノーベル賞やフィールズ賞などの大きな賞を授与される研究者を多数輩出してきたのも、京都大学理学研究科・理学部のこのような気風があったからだと考えています。また、京都大学理学研究科・理学部は我が国の理学分野の教育にも大きな貢献を果たしてきました。卒業生はアカデミックに留まらず、企業をはじめとした日本の多彩な分野で活躍しています。

 理学研究科・理学部での研究・教育は、社会に存在する様々な課題の解決にも大きな役割を果たすことができます。現在の日本は、少子高齢化、地域格差、経済の低迷、気候変動、潜在的な自然災害リスクなど様々な問題を抱えています。同様に世界にも多くの課題が存在しています。理学はこのような問題の解決に直接寄与するような学問ではありませんが、問題解決に必要な高度な研究能力を持つ人材の育成に有効であることは論を俟たない点でしょう。理学を学んだ学生は全く新しい発想で自然を研究する「すべ」を身につけますので、問題解決のために必要な深い洞察や大胆な発想の転換を行うことができます。さらに、理学は研究の過程において、問題解決の基礎となる情報分析の手法や概念の創出、新規な技術の提供、全く新しい考え方の提示を行うことができます。実際、社会を大きく変えるような発見や発明が直接関係ない分野から現れることは、よく知られた事実です。このように、理学研究科・理学部は社会に対しても広く貢献することが可能な組織であり、今後もその姿勢を崩さずに研究・教育を進めていきたいと考えております。その一環として、「数理を基盤として新分野の自発的創出を促す理学教育プログラム」(通称:MACS教育プログラム)のような学際融合分野の開拓の試みや附属サイエンス連携探索センター(通称:SACRA)の設置による教育・研究を支える仕組みの整備を進めているところです。

 本WEBでは、京都大学理学研究科・理学部の研究や教育に関わる最新情報を発信しております。是非ご覧になっていただき、我々のアクティビティを知っていただければ幸いです。今後のご協力やご支援をよろしくお願い申し上げます。

在学生の皆様へ

 理学研究科・理学部は、自由であるといわれる京都大学の中にあっても特に自由な学びができるところではないかと思います。理学部においては「緩やかな専門化」という教育理念のもとで、理学5分野のさまざまな科目が用意され、また講義や演習、実験、フィールド実習、セミナーのような少人数の授業など、それぞれの分野を学ぶための多彩な形態の教育を提供しています。ぜひこれらを活用して、皆さんが目指したい専門分野、自分が好きで得意な学問領域を見つけて、それを思う存分、深めていってください。

 大学で学ぶことの意義は、過去に得られた知識を取得するだけではなく、日々進展を続ける最先端の研究がどこにあり、どこに向かって進んでいるのかを知ることにあります。理学研究科・理学部で学ぶことができる学問分野は、それぞれが長い歴史をもち、これまで得られた多くの知見の上に成り立っています。基礎的な事項は自らの能力を高めるのに必要ですが、最先端の事項は将来の方向性や他の分野との関連性を理解するのに重要です。大学にはこのような最先端の研究が切り拓かれている現場がありますので、それを自らの眼でしっかりと見ていただき、実際に参加して体験していただきたいと思います。大学院においては、自らの頭を動かして興味の対象に深く没入することにより、自らの経験として理学という学問を身につけてください。

 自らの選んだ学問を深めていくことで、皆さんには自身の進むべき道が見えてくるはずです。ある人は研究者としてさらに学問の道に分け入り、またある人は自らが学んだ理学を、教育の場において、あるいは科学の普及のために活かそうとするでしょう。理学の学識や知見を基に様々な場で科学技術の発展に尽くす人もいれば、自らの発想をきっかけに起業する人もいるかもしれません。本理学研究科・理学部はこれまでも多方面で活躍する方々を輩出してきました。皆さんもそのような先輩に続いて、理学の素養を活かした幅広い分野・場面で活躍していただきたいと願っています。
 

志願者の皆様へ

 アドミッションポリシーに記載しておりますように、京都大学理学研究科・理学部で、私たちと共に学び研究する人の輪に加わっていただきたいと願っているのは、以下のような方々です:

  • 優れた科学的素養・論理的合理的思考力と語学能力を有し、粘り強く問題解決を試みる人
  • 自由を尊重し、既成の権威や概念を無批判に受け入れず、自ら考え、新しい知を吸収し創造する姿勢を持つ人

 京都大学の理学研究科・理学部は、長い伝統を持ちながらも、それに縛られない自由で多才多様な学生や教員が、物事の本質を探究することを目指して集う場です。本学は、自然と歴史に囲まれながら、何度も変革の源泉にもなった京都という街にあることも大きな魅力の一つです。その雰囲気の中で、多くの研究者が我が国の学問をリードし、大きな貢献をしてきました。京都の地で、事物の根源を探究する理学という学問を目指そうという方々に来ていただけることを心から願っています。
 

支援者の皆様へ

 

 これまで京都大学理学研究科・理学部に寄附などのご支援をいただきました皆様に、心より御礼申し上げます。いただいたご厚情は、学生の教育や研究の支援に、またそれを支える理学研究科の業務に活用させていただいております。その状況は理学研究科ホームページや、11月に行われますサイエンス倶楽部デイ等でご報告いたしておりますが、今後は広報活動をさらに充実させて、理学研究科・理学部の教育や研究の様々な展開を皆様にご報告できるように努めてまいります。

 理学研究科・理学部では、自然現象に関する真理の探究を行う理学研究の進展のみならず、高い科学的素養と論理的合理的思考力を身に着けて、粘り強く問題解決を行える眼力とたくましさを有する学生の育成を目指して、様々な取り組みを行っております。少子高齢化の時代を迎えて、ますますこのような高度に教育された人材が必要とされています。しかし、国や大学の厳しい予算と定員の削減の下で、私たちには余裕がなくなり、研究・教育の各局面で必ずしも十分なことが実施できなくなってきていると感じております。是非、優秀な人材を私たちと共に育てるという観点で、理学研究科・理学部での教育や研究の活動に対してのご支援をいただければ幸いです。心よりお願い申し上げます。