京都大学大学院理学研究科長・理学部長
佐々真一

 京都大学理学研究科・理学部のHP にお越しくださいましてありがとうございます。

 理学は、私たちを取り巻く自然界の様々な現象に目を向け、その背後にある真理を探究する学問です。自然や事物の本質について深く思考し、その普遍的な法則や仕組みを合理的に解き明かすことを目指しています。歴史を振り返れば、世界のあり方を大きく変えた科学上の発見の多くは、自然界の真理に対する純粋な知的好奇心から生まれてきました。

 京都大学理学研究科・理学部は、創立以来、研究者一人ひとりの自由な発想に基づく研究を何よりも尊重し、時代の流行にとらわれない独創的な研究を育んできました。ここに集う教員は皆、未知なるものの本質を見出すことに大きな喜びを感じ、探究活動に情熱を燃やしています。この好奇心旺盛で個性あふれる多様な教員陣こそが、私たちの最大の誇りです。

 私たちの研究・教育活動は、現代社会が直面する様々な課題の解決にも貢献できると信じています。少子高齢化、気候変動、自然災害リスクなど、日本や世界が抱える複雑な問題に対し、理学が直接的な解決策を提示するわけではないかもしれません。しかし、これらの課題に取り組む上で不可欠な、物事を深く洞察し、本質を見抜く力、そして既存の枠にとらわれず新しい発想を生み出す力を養う上で、理学は極めて有効な学問です。理学を学ぶことを通して、学生たちは自然を探究するための普遍的な「知の技法」を身につけ、それが社会の様々な場面で必要とされる大胆な発想の転換へと繋がります。さらに、理学の研究プロセスそのものが、問題解決の基盤となる新たな情報分析の手法や概念、革新的な技術、そして全く新しい考え方を生み出す源泉となります。社会を大きく変える発見や発明が、一見すると関連のない基礎研究から生まれることは、歴史が証明しています。

 私たちは、このような理学の力を社会に広く還元していくため、常に進化を続けています。その一環として、学際的な研究・教育を推進するために附属サイエンス連携探索センター(SACRA)を設置し、「数理を基盤として新分野の自発的創出を促す理学教育プログラム」(MACS教育プログラム)などを展開してきました。さらに、令和6年度からはSACRA内に新たに以下の3つの融合研究ユニット 「データ理学仮説創出ユニット」「未踏量子計測ユニット」「地球と生命の共進化研究ユニット」を立ち上げ、次代を担う若手研究者を中心に、分野横断的な研究を加速させています。

 一方で、理学部を取り巻く環境の変化に対応し、学生の多様性を一層向上させることも重要な課題です。この課題に対し、本学部では令和8年度入試より、特色入試枠を大幅に拡大するとともに、新たに女性募集枠を導入することを決定いたしました。これは、多様な個性と才能を持つ優秀な学生を全国・世界から迎え入れ、学びに多様な視点を取り込み、理学部全体をさらに活性化させるための重要な一歩です。今後も、選抜方法の更なる多様化を検討し、より多くの意欲ある若者に理学への扉を開いていきたいと考えています。

 このウェブサイトを通じて、私たちの研究・教育活動の一端に触れていただければ幸いです。京都大学理学研究科・理学部は、知的好奇心を原動力に、真理の探究と未来への貢献を目指して邁進してまいります。皆様の温かいご理解と、今後のご支援・ご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

在学生の皆様へ

 理学研究科・理学部は、自由であるといわれる京都大学の中にあっても特に自由な学びができるところではないかと思います。理学部においては「緩やかな専門化」という教育理念のもとで、理学5分野のさまざまな科目が用意され、また講義や演習、実験、フィールド実習、セミナーのような少人数の授業など、それぞれの分野を学ぶための多彩な形態の教育を提供しています。ぜひこれらを活用して、皆さんが目指したい専門分野、自分が好きで得意な学問領域を見つけて、それを思う存分、深めていってください。

 大学で学ぶことの意義は、過去に得られた知識を取得するだけではなく、日々進展を続ける最先端の研究がどこにあり、どこに向かって進んでいるのかを知ることにあります。理学研究科・理学部で学ぶことができる学問分野は、それぞれが長い歴史をもち、これまで得られた多くの知見の上に成り立っています。基礎的な事項は自らの能力を高めるのに必要ですが、最先端の事項は将来の方向性や他の分野との関連性を理解するのに重要です。大学にはこのような最先端の研究が切り拓かれている現場がありますので、それを自らの眼でしっかりと見ていただき、実際に参加して体験していただきたいと思います。大学院においては、自らの頭を動かして興味の対象に深く没入することにより、自らの経験として理学という学問を身につけてください。

 自らの選んだ学問を深めていくことで、皆さんには自身の進むべき道が見えてくるはずです。ある人は研究者としてさらに学問の道に分け入り、またある人は自らが学んだ理学を、教育の場において、あるいは科学の普及のために活かそうとするでしょう。理学の学識や知見を基に様々な場で科学技術の発展に尽くす人もいれば、自らの発想をきっかけに起業する人もいるかもしれません。本理学研究科・理学部はこれまでも多方面で活躍する方々を輩出してきました。皆さんもそのような先輩に続いて、理学の素養を活かした幅広い分野・場面で活躍していただきたいと願っています。
 

志願者の皆様へ

 アドミッションポリシーに記載しておりますように、京都大学理学研究科・理学部で、私たちと共に学び研究する人の輪に加わっていただきたいと願っているのは、以下のような方々です:

  • 優れた科学的素養・論理的合理的思考力と語学能力を有し、粘り強く問題解決を試みる人
  • 自由を尊重し、既成の権威や概念を無批判に受け入れず、自ら考え、新しい知を吸収し創造する姿勢を持つ人

 京都大学の理学研究科・理学部は、長い伝統を持ちながらも、それに縛られない自由で多才多様な学生や教員が、物事の本質を探究することを目指して集う場です。本学は、自然と歴史に囲まれながら、何度も変革の源泉にもなった京都という街にあることも大きな魅力の一つです。その雰囲気の中で、多くの研究者が我が国の学問をリードし、大きな貢献をしてきました。京都の地で、事物の根源を探究する理学という学問を目指そうという方々に来ていただけることを心から願っています。
 

支援者の皆様へ

 

 これまで京都大学理学研究科・理学部に寄附などのご支援をいただきました皆様に、心より御礼申し上げます。いただいたご厚情は、学生の教育や研究の支援に、またそれを支える理学研究科の業務に活用させていただいております。その状況は理学研究科ホームページや、11月に行われますサイエンス倶楽部デイ等でご報告いたしておりますが、今後は広報活動をさらに充実させて、理学研究科・理学部の教育や研究の様々な展開を皆様にご報告できるように努めてまいります。

 理学研究科・理学部では、自然現象に関する真理の探究を行う理学研究の進展のみならず、高い科学的素養と論理的合理的思考力を身に着けて、粘り強く問題解決を行える眼力とたくましさを有する学生の育成を目指して、様々な取り組みを行っております。少子高齢化の時代を迎えて、ますますこのような高度に教育された人材が必要とされています。しかし、国や大学の厳しい予算と定員の削減の下で、私たちには余裕がなくなり、研究・教育の各局面で必ずしも十分なことが実施できなくなってきていると感じております。是非、優秀な人材を私たちと共に育てるという観点で、理学研究科・理学部での教育や研究の活動に対してのご支援をいただければ幸いです。心よりお願い申し上げます。