小林 卓也

 

自然界に存在する生物の種類を調べるには、遺伝情報、すなわちDNA を調べる方法が役立ちます。4種類の塩基 (A, T, G, C と略される)で構成されるDNAの並び方は進化の過程で徐々に変化していくため、異なる種では塩基の並び方も異なっていることになります。

 

ここに着目し、特定のDNA の一部を読んで、生物種を特定する試みがDNAバーコーディングです。4種類の塩基配列を色分けしたものが、まるでバーコードのように見えることからこう呼ばれます。これらの配列情報を蓄積して、データベースを作製しようというのが、DNA バーコード計画です。カナダのエベール博士が2003 年に提唱し、全生物のDNA バーコードデータベースの作製計画が進められています。

 

このDNA バーコーディングの技術は食品の偽装を明らかにすることにも応用できます。例えばアメリカでは、2007 年に有毒なフグがアンコウと偽って販売されていた事件を受けて、スミソニアン博物館と提携して独自の魚類DNA バーコードデータベースを作成しました。これにより、判別のつきにくい切り身の状態の魚でも、正確な検査が行えるようになりました。