橋谷 文貴

 

人工筋肉とは電流を流したり、空気圧をかけたりすることで筋肉のように収縮する駆動装置のことをいいます。SFの世界でよく使われる言葉ですが、紛れも無く実在する装置で多くの研究者が開発に勤しんでいます。

 

人工筋肉が目指しているのは人の筋肉のような滑らかで柔軟な動きです。普段はあまり気にしませんが筋肉は駆動装置として優れた性能を持っており、私達がロボットと比べ物にならないほど効率的に運動できるのは筋肉のおかげなのです。現在ロボットは主にモーターを駆動装置として使っているのですが、これを人工筋肉に置き換えることでより効率的に運動できるロボットの開発が可能となります。

 

人工筋肉は駆動装置として大変魅力的なのですが、実用されている例は殆どありません。これは人工筋肉がまだまだ開発段階の技術で短所も多く孕んでいるからです。収縮を何度も繰り返すと性能が落ちてしまう点や使っている素材が特殊であるため非常に高価である点がよく問題となります。

 

しかし最近テキサス大学の研究グループから新しい人工筋肉が報告されました。この人工筋肉は釣り糸に使われるナイロンを捻ってコイル状にしただけの単純な構造をしているので極めて安価に作ることが可能です。そして加熱によって人の筋肉の100 倍の力で収縮を起こすことができ、収縮の繰り返しに対しても良好な結果を示しているようです。安価でありながら他の人工筋肉と比べて遜色のない性能を持っているため今後の発展が期待されます。