小林 卓也

 

サンマやイワシ、サケなど私たちは毎日のようにたくさんの水産物を消費しています。しかし資源はその量に限りがあり、乱獲をすればいずれ絶滅してしまいます。

 

では、いったい毎年どの程度の量をとるようにすれば、持続的に水産物を利用しつつ、最大の漁獲量を得ることができるのでしょうか。そのような問いに答えるために、生物個体の数とその増え方を扱う理論が用いられています。

 

生物である水産資源は、繁殖によって子孫を残すことができるので、一部を収穫してもまた回復するという特徴があります。そのため基本戦略として、毎年繁殖により増えた分だけを収穫すれば、持続的に一定の収量を得ることができます。

 

これは銀行の預金金利と同様で、増えた利息分だけを引き出せば、元本を維持したまま毎年利益を得ることができます。利息とは元本と利率を掛け合わせたものですから、利率が一定なら元本が大きいほど毎年多くの利息分を得ることができます。

 

ところが生物の集団がもつ性質として、その数が多くなるほど、利率に当たる個体数の増加率が減少するという点があります。これは餌や住み場所が限られていて、生息できる量に限りがあるためです。理論上では、資源(生物)の量がこの限界量の半分くらいのときに、最大の収量を得ることが可能になります。

 

20 世紀前半、漁具の技術革新が進み漁獲効率が上がったにもかかわらず、漁獲量自体はむしろ減少していました。そのような状況が乱獲にあることが明らかになり、資源管理の理論の構築が進められました。現在でも、多くの改良を重ねつつも、漁業を始め林業、狩猟などの野生動物の資源管理戦略の基礎としてこの理論が用いられています。