企画名

外れ値でみる理学
 

参加教員

教員名 所属 職名
宮路智行 (代表教員) 数学・数理解析専攻 准教授
林邦好 京都女子大学データサイエンス学部  
 

企画の概要

 外れ値とは何か.Grubbsによれば,外れ値とは標本集団の中で他のデータから著しくの外れたデータのことをいう.Beckman & CookはこれをContaminant とDiscordant Observationとに分類している.前者はデータから除外したい厄介者だが,後者は新たな発見の萌芽かもしれない.文脈によっては,時系列データの中でパターンから外れるデータを検知することで,異常検知や変化点検知などとも関連する.外れ値を知ることはパターンを知ることであり,データから知識を発見する糸口となれば,創造の源泉にもなるだろう(日々の教育・研究を支えるコンピュータのサイバーセキュリティにも役立てられるだろうか).一方,力学系理論においてはパラメータの変化による力学系の質的な変化―分岐が現象の理解に一つの視点を与えている.分岐と密接に関連して,時系列データから力学系の変化の予兆を捉える指標としてEarly Warning Signals(EWS)が提案され,利用されている.そこに統計的アプローチと力学系的アプローチの接点を見出したくなる.このSGでは論文や参考書の輪講を通じて外れ値や異常検知,EWSなどの方法を学ぶ.知識の伝授ではなく,ともに学び,その発展や応用の可能性について専門分野を横断して議論したい.可能であれば実践に取り組みたい.
参考文献

  • R. J. Beckman and R. D. Cook, Outlier … … …. s, Technometrics, 25(2) (1983), 119--149.
  • F. E. Grubbs, Procedures for Detecting Outlying Observations in Samples, Technometrics, 11 (1) (1969) 1--21.
  • F. R. Hampel et al., Robust Statistics: The approach based on influence functions, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1986.
  • M. Scheffer et al., Early-warning signals for critical transitions, Nature, 461 (7260) (2009) 53--59.
  • M. Scheffer et al., Anticipating Critical Transitions, Science, 338 (6105) (2012) 344--348.
 

説明会資料

4/28(金)のスタディグループ説明会資料はこちら
 

実施期間・頻度

隔週1回の頻度で定期的にセミナーを行う形式を想定している.また,それに加えて夏休みなどは集中して取り組むことも考えられる.詳しくは参加者と相談して決めたい

TA雇用の有無

TAの雇用有
 

その他、特記事項など

原則として,数学教室のセミナー室において対面で実施する.ただし,感染症拡大の状況によってはZoomによるオンラインでの実施の可能性もある.

問い合わせ先

宮路智行 miyaji.tomoyuki.4m*kyoto-u.ac.jp
(*を@に変えてください)
 

スタディグループへの登録は締め切りました。
関心のある方は macs *sci.kyoto-u.ac.jp(*を@に変えてください)までご連絡ください。

 


 

活動報告

活動目的・内容

 広い意味で外れ値にまつわる数理的および数理統計的手法を学び,その発展や応用の可能性について専門分野を横断して議論することを目的として活動を始めた.月1~2回程度対面およびオンラインでセミナーを行い,主に臨界遷移現象のEarly Warning Signals(EWS)に関する文献を講読した.
● M. Scheffer et al., Early-warning signals for critical transitions, Nature, 461 (7260) (2009) 53--59.
● 松森唯益『力学系における分岐現象のearly-warning signals』生産研究, 71(2) (2019)169--172.
● 中川拓麻, 奥牧人, 合原一幸, 『動的ネットワークマーカーによるシステムの転移の予兆検出』生産研究, 68(3)(2016) 271--274.
● 平田祥人, 陳洛南, 合原一幸『非線形時系列解析の基礎理論』東京大学出版会,
2023年 を主なガイドとして活動に取り組んだ.

また,2023年11月27日に開催した大林一平氏(岡山大学)と中野直人氏(明治大学)によるセミナーでは,パーシステント・ホモロジーおよびリザバーコンピューティングについて活発な議論が行われた. 2023年12月4日と2024年1月22日に実施したオンラインセミナーでは友枝明保氏(関西大学)と岡本和也氏(早稲田大学)とともに交通流のモデルと時系列データについて議論した.

活動成果・自己評価

 今年度は主にEWSについて勉強し,力学系的なアプローチと統計的なアプローチの交点についての活発な議論を通じて,その基本的な内容を理解することができた.参加学生は各々の興味に応じてネットワークダイナミクスや経済時系列データなどへの応用を見出しており,活動の継続によりさらなる発展が見込まれる.
手探りでスタートした初年度の活動は教員2名が参加してセミナーを実施できることが活動日の必要条件となり,日程調整の困難から月曜を活動日とせざるをえず,セミナーに参加できない学生が多数でてしまった.次年度は意欲のある学生が積極的に参加できるよう配慮したい.

 

参加メンバー

氏名 所属 職名・学年
宮路智行(代表教員) 数学・数理解析専攻 准教授
林邦好 京都女子大学データサイエンス学部 准教授
松田凌 数学・数理解析専攻 D2
大江優希 数学・数理解析専攻 M1
竹田航太 数学・数理解析専攻 D2