平賀 椋太
理学部化学教室に所属していますが、私の研究室ではDNAを扱っています。DNAというと遺伝の担い手、生命の設計図として生き物の一部として扱われますが、これに有機合成のような化学の手法で迫るというのがテーマの一つです。
DNAは、化学で扱える物質でもあり、その物質としての性質も立派な探求対象です。たとえば、あの有名な二重らせん構造は、溶液などの条件次第で逆回りの二重らせんのような変わった構造を取ることがあります。私たちの健康や生命のしくみにかかわるような、がん細胞のような細胞について、DNAが特有の構造を取ることが観察できれば、その構造を取るのを邪魔する薬剤を開発してがんを抑える、といった研究につながるかもしれません。
この二重らせんのような分子レベルの構造は顕微鏡でも見えないくらい小さいので、NMRやX線構造解析のような、DNAだけ取り出して電磁波で解析するような方法がいまのところ主流です。実際の細胞の中のような複雑な環境での様子を見るには、何か工夫が必要になります。
私が所属しているグループでの取り組みは、DNAの塩基の一部を、合成した蛍光を発するものに置き換えることで、蛍光の変化からDNA全体の構造や、その構造の環境による変化を簡単に観察できるようにしようというものです。
こうした化学の手法で、DNAのような生命にかかわるような物質に対して切り込んでいこう、というのが、私たちが目指しているケミカルバイオロジーという研究のあり方です。