企画名
暗号理論の数理と社会実装 |
参加教員
参加教員名 | 所属 | 職名 |
---|---|---|
伊丹將人 | サイエンス連携探索センター | 特定助教 |
伊藤哲史 | 数学・数理解析専攻 | 准教授 |
企画の概要
暗号技術はデジタル社会の安全性を根底で支えており、必要不可欠なものになっています。しかし、量子計算機が実現すると、現在利用されている暗号方式の安全性が失われることが分かってきました。そのため、量子計算機でも解読が困難な暗号である耐量子計算機暗号の研究が現在盛んに行われています。そこで本SGでは、代数学・量子物理学・情報理論などが関わる分野横断的なテーマでもある耐量子計算機暗号に焦点を当てます。今年度は、耐量子計算機暗号の中でも一番有望視されている格子暗号の数理をみんなで一緒に学びます。
具体的には、前期から後期の初めにかけて青野良範,安田雅哉『格子暗号解読のための数学的基礎』(近代科学社)の輪講を行い、格子暗号の基礎の習得を目指します。その後は格子暗号に関する研究論文を読み、生じた疑問をみんなで検討するような研究を行います。2025年1月28日〜31日に小倉で開催される研究会「2025年 暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS2025)」で研究発表を行うことを目指しています。
MACSは異分野交流の場でもあるので、標準的な暗号理論や量子物理学の知識は前提とせずに輪講を行う予定です。輪講に加えて、専門家を招いたセミナーを開催したり、参加者の興味に応じて暗号を実装する機会を設けたいと考えています。
また、暗号理論が社会でどのように役立っているかを学ぶためにも、各回の発表者には暗号理論を用いてセキュリティを高めている技術や製品を紹介してもらいたいと思っています。情報セキュリティやプライバシーへの関心は世界的に高まっており、日々様々な技術・製品が誕生しています。暗号理論の社会実装という応用面にも関心を払うことで、今後の人生がより豊かなものになると信じています。
暗号理論は様々な分野にも関わっています。数学・物理だけでなく、様々な分野のバックグラウンドを持つ学部生・大学院生の皆さんの参加をお待ちしています。
実施期間・頻度
前期(6月~7月)と後期(10月~1月)に隔週で各回90分のセミナーを実施する予定です。曜日・時間帯については、参加希望者で相談して決めたいと思います。不定期に専門家を招いたセミナーを行います (前期・後期あわせて2,3回程度の予定)。1月には小倉で開催される研究会 SCIS2025 に参加予定です(希望者のみ)。
説明会資料
4/19(金)のスタディグループ説明会資料はこちら
TA雇用の有無
有り
その他、特記事項など
輪講はハイブリッド形式で実施予定です。連絡や相談は、オープンソースでありエンドツーエンド暗号化を実装しているElement (Messenger)を利用したいと考えています。
問い合わせ先
itami.masato.7u*kyoto-u.ac.jp
(*を@に変えてください)
スタディグループへの登録は締め切りました。
関心のある方は macs *sci.kyoto-u.ac.jp(*を@に変えてください)までご連絡ください。
学会参加報告
氏名
勝岡唯弘
所属・学年
理学研究科数学・数理解析専攻修士二回生
出張期間
2025年1月28日~1月31日
参加学会
2025年 暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS2025)
開催期間
2024年1月28日(火)~1月31日(金)
会場
リーガロイヤルホテル小倉 福岡県北九州市小倉北区浅野2丁目14-2
参加報告
SCISでは暗号を中心に情報セキュリティに関する幅広い研究成果が発表される。スタディグループで勉強した格子暗号をはじめとする耐量子計算機暗号に関する発表を中心に聴講参加しました。発表の中には暗号の対象やアルゴリズムに対して、類体論や代数幾何、有限群論といった数学的な理論を応用しようとする試みがあり、どれも非常に興味深く刺激的だった。また、発表の中には新たな分野のセキュリティモデルを立ち上げる取り組みがあった。VRやAR環境におけるセキュリティやプライバシーのリスクや想定される攻撃の列挙、あるいは近年問題になっているAIが抱える知的財産権の問題を解決する手法に関する考察などがあり、技術の発展に伴う倫理的問題に対して適切なルールの枠組みを作成する、あるいは更なる技術で倫理的問題を解決する取り組みの重要性を認識できた。
氏名
大江優希
所属・学年
理学研究科数学・数理解析専攻
出張期間
2025年1月28日~1月31日
参加学会
2025年 暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS2025)
開催期間
2024年1月28日~1月31日
会場
リーガロイヤルホテル小倉
発表タイトル
超特異QMアーベル曲面から構成される同種写像グラフのラマヌジャン性
発表形式
口頭
参加報告
MACSで修士課程での専門の整数論以外の、暗号理論についての知見を得た。
学会は暗号理論と情報セキュリティに関する幅広い発表があった。
修士論文の内容が実は耐量子計算機暗号に深くかかわっていたため、研究成果を暗号理論の文脈でとらえなおし、発表した。
質疑応答としては、具体的な実装に関する質問や、計算論的側面についての質問がなされた。
準備の大切さ。15分の発表で、13分程度の長さの分量の原稿を準備していたため自信をもって発表できた。先生方からもお褒めの言葉をいただき、嬉しかった。
ブロックチェーンの発表が興味深かった。
発表の際緊張していることが伝わるプレゼン、早口で何が最重要なのかよくわからないプレゼン、文字が多すぎて読めないスライドがあり、プレゼンテーションのやり方についての知見につながった。
4月から就職するため、今後この研究を適切に引き継いで行きたい。
氏名
中森聡
所属・学年
理学研究科数学・数理解析専攻修士1年
出張期間
2025年1月29日~1月31日
参加学会
SCIS2025
開催期間
1/28-1/31
会場
リーガロイヤルホテル小倉
参加報告
新たな情報の取引手段の提案から、暗号に関する数学的な考察や、AIを用いたセキュリティに関するものまで幅広く扱われていた。全く知らないことに関するテーマも多く、様々な分野に関心を持つことができた。