[SG2020-10]コンピュータでとことん遊ぶ




 

 

活動報告

活動目的・内容

 このSGの目的は,学生たちにその自由な発想で計算機を活用する場,人的ネットワークを提供し形成して,コンピュータの主体的で新奇な活用のための基盤を学生たちに培うことであり,またその支援にある.このSGは,あくまで主体は学生である.

 2018年度と2019年度には、学生主体位の活動とその支援を企画の目的とした。手探りで試行錯誤が続いているが、学生による本読みや電子工作、ワークショップの開催など漸く活動のスタイルができつつある.ただし,参加者が大学1回生から大学院D3の学生まで広範であるために,課題を主体的に選んでグループワークを行うことはまだ十分ではない.教員の側の支援の具体的方法に検討が必要であること痛切に実感しているのが現状である.

 2020年度は一昨年度と今年度を継続し、引き続き学生の自主的な活動とその支援をメインとするスタイルを続ける。 具体的な支援として,このSGの教員にそれぞれのコンピューティングに関連した興味や手法をセミナーで提供していただき,学生の興味に応じた課題の解決へのアドバイスを行っていただく.また,積極的に学内外の専門家にもセミナー等を通して参加いただく.学生には,専用のPCや情報環境機構のクラウドコンピュータを利用した遊びの場(開発環境)を提供することを考えている.更に,積極的に学外への情報の発信や話題の提供なども行うこと検討する.

 

活動成果・自己評価

 今年度は、コロナ禍対応で基本的にオンラインでのセミナーと個別の活動となった。セミナーは、月1回+α程度の頻度で、それぞれの活動の紹介と本読みを行った。個別の主な活動は、3DCGとロボットのプログラミングである。この結果は、SG10のホームページで公表する予定である。

 これらに加え、鎌田京大名誉教授にお願いして、「寺田寅彦の災害論と2人のMK(南方熊楠と宮沢賢治)から見るケア」のタイトルでオンデマンド講義を開いた。この詳細については、別途報告を行っている。この他、オンラインの電子工作ワークショップを開く予定であったが、講師の方の都合つかず、来年度にお願いすることとなった。今年度は対面で行うことができず、十分な議論や雑談ができず例年と違って参加学生は戸惑っていたが、個別の活動は成果を得たと評価している。昨年度ホームページに公開した活動に対して、高校の情報担当の教諭から問い合わせがあり、交流を行っている。情報発信の重要性を改めて確認した。

 

参加メンバー

氏名 所属 職名・学年
藤 定義(代表教員) 物理学・宇宙物理学専攻 准教授
松本 剛 物理学・宇宙物理学専攻 助教
竹広 真一 数理解析研究所 准教授
中 七海 地球惑星科学専攻 M2
糀谷 暁 化学専攻 M2
今井 稀温 地球惑星科学専攻 B4
市岡 宏樹 生物科学専攻 B3
林 大寿 物理学・宇宙物理学専攻 M2
御代川 克輝 化学専攻 B3

 
 

[SG2020-11]理学におけるデータ科学実践:機械学習で自然科学を読み解けるか


Figure 1: 内部結合をランダム行列で与えた場合の誤差のcontour plot.ランダム行列の各成分を平均 J0/N,分散 J2/N で取り(Nはサイズ),(J0/J, 1/J) の常用対数軸の相図を用いた.黒点線はスペクトル半径の期待値が1の等高線.上段は学習誤差,下段は汎化誤差.誤差の傾向はスペクトル半径に対して一様ではなく,さらに相の3重転移点(この図では中心)近傍で誤差の極小を取ることがわかった.


 

 

活動報告

活動目的・内容

【活動目的】データ解析手法としての機械学習は自然科学の分野でも市民権を得てきている.見た目の華々しさも伴い脚光を浴びているが,なぜそれが学習できるのかは完全には理解されていない.単に写像の近似といえばそれまでだが,学習に対する理論的な理解なしでは単に手法を当てはめただけに過ぎない.代表教員としてはそれではつまらないので,本SGでは理論的に学習可能性について考察を進めることを目的とした.

【内容】本SGでは全てオンラインで活動を行なった.基本的な情報交換はSlack,コードの共有は GitHub,進捗や計算結果の共有はMiroを用い,隔週程度の頻度で Zoom で打ち合わせした.計算の使用言語は主に Python,開発環境は Jupyter Notebook を用いた.後に大規模計算が必要になり大型計算機センターのスパコンを利用したが,その並列計算環境の都合から Fortran を用いた.参加院生の2名はTAとしてコードの開発,数値計算データ作成のみならず,背景の物理の知識を活用して理論的な議論に至るまで非常に積極に参加してくれた.

 

活動成果・自己評価

【活動成果】本SGでは再帰的ニューラルネットワークの1つである Echo-State Networkに着目した.この手法はネットワーク内部の結合はランダムのまま,出力写像のみ学習する.学習可能性は内部ネットワークの設計に依存するため,ランダムネットワークの性質を詳しく調べることをTAから提案してもらった.さらに統計物理の模型の理論のアナロジが効くのではないかというアイディアを提示してもらい,その視点での研究を行った.この分野ではしばしば「edge of chaos」が重視されているが,これに対しての新たな知見を得ることができた.

【自己評価】今年度はコロナ禍で前年度のような活動はできず,参加登録者全員の希望に沿うことはできなかったのは残念だった.一方でTAが自走してくれたのは大きな助けとなった.TAの2人はふんだんに彼らの背景の物理のアイディアを注入してくれており,今年度のSGで一番多く学ぶことができたのは代表教員かもしれない.分野横断で実を結ぶには相互の理論を基に議論を繰り返し交わすことが必要不可欠だということを再認識できた.

 

参加メンバー

氏名 所属 職名・学年
中野 直人(代表教員) 理学研究科 連携講師
宮路 智行 数学・数理解析専攻 准教授
兎子尾 理貴 物理学・宇宙物理学専攻 D1
春名 純一 物理学・宇宙物理学専攻 D1