地球惑星科学専攻(地球物理学教室)・准教授 坂崎 貴俊

 
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7.研究紹介 坂崎貴俊先生

 大気の自由(共鳴)振動を研究しています。バスタブのお湯をある・・空間パターン・振動数でゆすると揺れが増幅するのと同じ現象です。図1aは全球観測データに基づく地上気圧(熱帯平均)の二次元(東西波数-周波数)スペクトルで、どの東西波長・周波数成分のエネルギーが大きいかを示すものです。さらに図1bは、大気力学理論に基づいて計算された共鳴点(どの東西波数-周波数で共鳴が起こるか)を重ねて描いたものです。共鳴点がスペクトルの離散的なピークと非常に良く一致しており、異なる空間構造を持つ無数のモードで共鳴が起こっていることを意味しています(図2にモードの構造(気圧の偏差パターン)の例を示します)[1]。

 自由振動は大気力学の基本問題で、その理論は遥か昔ラプラスにまで遡ります。一方、観測の制約等からこれまで実在性が確認されたのはごく一部のモードにすぎず、また近年では研究活動も下火で、現象自体も半ば忘れられた存在でした(と思います)。そんな中で、我々は最新データを使ってモード群を網羅的に検出するのに成功した、という位置づけです。「温故知新」という言葉の重みを感じます。このモード群、未だに励起メカニズム(何がゆすっているのか)すらよく分かっていません。また、日々の気象にどう影響しているのかも謎です。この古くて新しい分野を再度開墾していきたいと思っています。

 余談ながら、図1は狙って描いたものではありません。あるときPythonの練習を兼ねて色々お絵描きしていたものの一つです。恥ずかしながら、当初図1のスペクトルピークの意味が分かりませんでした。ある時、これはもしや自由振動では?と思って理論を重ねて描いてみたところ、見事な一致に感動しました。普段私は目的なく街を歩き回るのが好きなのですが、路地裏に粋なお店を発見して嬉しくなることが屡々あります。上述の発見はまさにそのような感じでした。犬も歩けば棒に当たる。半ば運頼みですが、計画性のない、嗅覚を使った萌芽的研究も続けていきたいと思っています。

[1] Sakazaki, T., and K. Hamilton, 2020: An Array of Ringing Global Free Modes Discovered in Tropical Surface Pressure Data. J. Atmos. Sci., 77, 2519–2539, https://doi.org/10.1175/JAS-D-20-0053.1.(プレスリリース記事:『地球大気の共鳴振動を網羅的に検出 -大気は梵鐘のように「鳴り響いている」-』
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2020-07-08-0

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図1:地上気圧データ(熱帯域平均)の東西波数-時間周波数スペクトル。暖色系ほどスペクトルが強い。(b) は (a) に理論的に予測される地球大気の固有振動数を重ねて示す(異なる色は異なるタイプの波を示す)。理論的に予測された東西波数・時間周期のところで強いスペクトルが観測されている。※東西波数:経度方向の節の数;波数1(2)は赤道上では東西波長40,000 km (20,000 km)に相当する。

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図2:自由振動モードの空間構造(気圧の偏差パターン)の例(2例)。