元附属地球熱学研究施設所属・名誉教授 竹村 惠二

 
 

1971年に京都大学に入学して、この3月に定年退職の日を迎えた。47年の歳月であった。

 

この間、二つの側面の地球科学の意義を感じさせられた。京都での日々と別府での日々は、そのための重要な機会となった。ひとつは「理学としての地球科学」であり、もうひとつは「地域から学ぶ地球科学」である。両者に共通して重要なのは「大地をみる目の多様性」であるとの思いが現在の私の中にある。ここでは、別府での研究・教育・地域貢献を中心に、別府勤務で感じてきた「地域から学ぶ地球科学」をまとめてみる。

 

私の理学部・理学研究科の教育・研究期間のうち、別府で22年の歳月を過ごした。研究施設は、地球物理学教室の志田順(しだとし)教授の尽力によって1924年設立され、研究を開始した。すでに90年を超える歳月を別府の地で過ごしてきた建物は国の登録有形文化財でもある。この地は、すばらしい地球科学のフィールドとしての価値を有していた。地熱・温泉の研究、地震・火山・活構造の研究はこの間大きな進歩を遂げたが、最近ではさらに、別府湾に保存されたテクトニクス、気候変動の記録が国際的な注目を浴びることとなった。また、研究フィールドとしての価値とともに、最近は実施することが困難になりつつある学生・院生へのフィールド実習の貴重な場所として役割が大きくなっている。

 

地域の人とともに生きてきた施設として、温泉に関わる対応、地震・火山災害に対する対応等、地域や地方自治体への大きな貢献の歴史があるが、最近では毎年開催する施設公開によって、地域とのつながりがより強くなったと感じている。別府・大分の人にとっては、京都大学とは「京都大学理学研究科附属地球熱学研究施設」のことであり、その施設が「京都大学の窓」として、地域との交流を図る重要な位置を占めることを法人化後には大きく意識することになった。

 

京都大学にとって、遠隔地と称される日本各地での研究施設の活動によって、京都大学の評価がさらに日本各地で高まることを期待している。