スレヴィン大浜華

 

 榎戸輝揚・京都大学白眉センター特定准教授らの研究チームは、私たちの身の回りの「物質」とほとんどの性質が同じだが、電気的性質などは反対の「反物質」が雷雲でつくられることを発見した。新潟県柏崎市で2017年2月6日に発生した雷にともない、地上で2種類のガンマ線が検出されたことから明らかになった。2017年11月23日付で英国の学術誌「Nature」に発表された。研究チームは、今後観測地点をより広域で行い、多様な条件下でのデータを得ることを目指す。

 

 およそ138億年前の宇宙誕生時には、物質と同じ数だけ反物質が存在したと考えられている。例えば、電子の反物質は陽電子とよばれる。質量などほとんどの性質が電子と同じだが、電荷はプラスで電気的性質が電子と反対だ。現在の宇宙に物質だけが残っている理由は分かっておらず、研究が進められている。今回の研究では、電子が陽電子に出合ったときに放出されるガンマ線を検出した。雷の研究に新たな視点を生み出すと期待される。

 

 研究のスタートアップに際しては、学術系クラウドファンディング「Academist」で一般市民からの支援を得た。科学者が研究の成果を公開し、賛同する市民からサポートしてもらう「オープンサイエンス」のひとつのかたちだ。「オープンサイエンスのアプローチで、世界的に信用されている科学雑誌「Nature」に載るような世界最先端の論文を出せるということを示した。新しい科学の在り方として非常に面白い」と榎戸特定准教授は話す。今後は観測拠点の確保やデータ解析にも市民との連携を取り入れる予定だ。