瀧口 あさひ
薬とは、タンパク質の形にぴったりはまるような薬の分子がくっついて、タンパク質の働き方を変えることで病気を治します。ですから目的のタンパク質とよく相互作用する化合物を探し出すことが薬を開発するために大事なステップです。実際には数多くの化合物を用意して一つずつタンパク質と反応させて薬として効果があるか調べて来ましたが、これはあてずっぽうで調べるようなもので時間も手間暇もかかります。
これを助けるのがコンピュータを使ってバーチャルでタンパク質と化合物が結合するか試す方法です。これなら手作業よりもずっと多くの化合物について調べられるだけでなく、今手元にない化合物についても調べられます。これで薬の候補を絞った後、実際に薬の作用があるか実験して効率よく創薬しています。
ところで細胞膜に存在する膜タンパク質に薬を作用させれば病気を治せるタンパク質が多いと言われています。そしてコンピュータで薬の候補を計算するにはタンパク質の立体構造の情報が不可欠です。立体構造を解析するにはタンパク質の結晶を作る必要があるのですが、膜タンパク質はそのままでは水に溶けず結晶化できないので界面活性剤を加えます。しかし、そうすると結晶の質が悪くなって構造解析が困難になり、創薬までたどり着いているのはごく少数になります。これを解決するために、大学では多くの膜タンパク質に適用できる結晶化の方法を研究して創薬に貢献しようとしています。