草場 哲

 

「光」と聞いて何を思い浮かべますか。太陽の光、蛍光灯の光、レーザーポインタの光…一口に光と言っても、実に様々な光源があることが分かります。中には十フェムト秒(1フェムト秒=10-15秒=0.000000000000001秒)を切るような非常に短い時間だけ光るレーザー光源なども存在します。光のエネルギーが短い時間に集中するため、光っている瞬間はとても強く光っていることになります。

 

光物性物理学は物質が吸収した光、通ってきた光、反射した光、或いは物質自身が発する光を調べることで、光と物質がどのように相互作用をするのか、光を物質に当てたときに物質はどのような状態にあるのかを明らかにする学問です。この分野は絶えず光源と光検出器の技術発達に伴って進歩してきました。特に、先に述べたようなレーザー光源を用いることで、強い光の下で非常に短い時間に起こる現象を調べることができるようになりました。

 

例えば、ある物質に強い光を当てると、電子が動きにくくなり、電気を流す金属だったものが絶縁体へと変化する現象が最近報告されました。通常、金属に電場をかけると電子がプラスの方へと移動します。ところが電磁波である光は高速で電場のプラスマイナスの向きが入れ替わっているため、電子はどちらの方向へ動いたらよいか分からず、電子の動きが止まってしまうのです。半導体に光を当てると自由電子が増えて電気を流れやすくことは有名ですが、この研究によりその逆向きの変化が実現されたのです。

 

このように最先端光源を用いることで物質の色や電気抵抗などの性質を自在に制御することが可能となり、将来的には新たな光・電子デバイス等の開発の基礎となると考えられます。