廣田 誠子

 

欧州原子核研究機構(CERN)の機構長、Heuer 氏は、かつてOPAL という実験グループを率い、「素粒子の世代数」を明らかにしました。

 

1930 年代以降、新しい素粒子がいくつも発見され、従う法則や持っている電気の量で4 つに分類できるのがわかると、なるべく少ない素粒子と法則で自然現象を理解したい物理学者たちは戸惑いました。性質の違う素粒子が1つずつ、1 セットあれば世界は作れるはずなのに、同じ役割を果たす素粒子がいくつもあるのは何故か、そもそも何セットあるのか、と。このセット数を世代数と呼びます。

 

世代数を調べるため、OPAL 他、4 つの実験グループがCERN のLEP という加速器で電子と陽電子(プラスを持った電子)を衝突させてZ 粒子を作り、それが2つのニュートリノに変身するまでにかかる時間を調べました。

 

Z 粒子が他の素粒子へと変身するのは確率で決まる現象です。Z が次の瞬間にZ のままか、違う粒子に変わるかは、神様がくじ引きするようなもので、当りならZ をニュートリノに変え、はずれならZ のままで新たにくじを引くのです。変身までの時間は「当りを引くまでに何回くじを引いたか」と同じです。

 

世代数が大きいと、くじの中の当りの数が増え、くじを引く回数が減り、Z は早く変身します。ニュートリノは世代の数だけあり、世代が違っても性質は同じなので変身確率は同じです。そのため、当りの数は1 世代の時の世代数倍に増えるからです。

 

測定結果は、世代数を3 と仮定して理論から予測される時間と一致しました。Heuer 氏らの実験により素粒子の世代数は3 と判明したのです。