企画名

生命流体×流線トポロジーデータ解析(TFDA):生命のつくる流れとトポロジー

 

参加教員

教員名 所属 職名
坂上 貴之(代表教員) 数学・数理解析専攻 教授
石本 健太 数理解析研究所 准教授
平島 剛志 白眉センター 特定准教授
 

企画の概要 実施期間・頻度

 空を飛ぶトンボや蝶,海を泳ぐ魚,生命は自らの体を動かすことによって周囲に流れを作り出して飛翔や推進を実現しています.現代のコンピューターを用いた大規模シミュレーションによって,生命体が作り出す流れと生み出される力の関係などが定量的に調べられています.また、近年は計測技術で流れ場が可視化できるようになってもいます.しかし,実際に生命体によって作り出された流れは,大小様々なスケールの流れ構造が複雑に絡み合っており,それらの流れの構造がどのような形でこうした運動を効果的なものにしているかはそれほど明確ではありません.そのため,様々な観点でこうした生物流体の流れを捉えることが必要となっています.

 一方,流線トポロジー解析は,二次元ベクトル場の作り出す流れのトポロジカルな構造をCOT表現と呼ばれる文字列で表現される離散平面グラフを一意に割り当てて分類する数学的手法で近年開発されたものです.この解析を様々な流線のデータに使うことで,データ解析が可能になっており,これを流線トポロジーデータ解析(Topological Flow Data Analysis=TFDA)として大気気象のデータや心臓血流などに応用されはじめており,流線トポロジーで複雑な流れの「おおまかな」構造を捉えることが有効であることが知られつつあります.

 今年度は数理解析研究所で生命流体をフィーチャーした国際研究が数多く開催されることになっています.これに合わせて,本SGではこのTFDAの技術を生物流体の数値計算データや計測データに使って,何か面白いことがわからないかを考えようというものです.TFDAについても生物流体についても専門的知識を仮定しません.前期ではTFDAの理論の簡単な説明から始めて,TFDAを行うPython上のソフトウェア(Psciclone)のチュートリアルを実施して技術を習得した後,後期には具体的なデータに対してこれを使って見ようと考えています.

 参加者の学生さんには,この理論とチュートリアル,成果をWebとして発信するということを目的にします.

 

TA雇用の有無

TA雇用有

 

問い合わせ先

坂上 貴之 sakajo*math.kyoto-u.ac.jp
(*を@に変えてください)
 

スタディグループへの登録は締め切りました。
関心のある方は macs *sci.kyoto-u.ac.jp(*を@に変えてください)までご連絡ください。

 


活動報告

活動目的・内容

 空を飛ぶトンボや蝶,海を泳ぐ魚,生命は自らの体を動かすことによって周囲に流れを作り出して飛翔や推進を実現しています.現代のコンピューターを用いた大規模シミュレーションによって,生命体が作り出す流れと生み出される力の関係などが定量的に調べられています.また,近年は計測技術で流れ場が可視化できるようになってもいます.しかし,実際に生命体によって作り出された流れは,大小様々なスケールの流れ構造が複雑に絡み合っており,それらの流れの構造がどのような形でこうした運動を効果的なものにしているかはそれほど明確ではありません.そのため,様々な観点でこうした生物流体の流れを捉えることが必要となっています.一方,流線トポロジー解析は,二次元ベクトル場の作り出す流れのトポロジカルな構造をCOT表現と呼ばれる文字列で表現される離散平面グラフを一意に割り当てて分類する数学的手法で近年開発されたものです.この解析を様々な流線のデータに使うことで,データ解析が可能になっており,これを流線トポロジーデータ解析(Topological Flow Data Analysis=TFDA)として大気気象のデータや心臓血流などに応用されはじめており,流線トポロジーで 複雑な流れの「おおまかな」構造を捉えることが有効であることが知られつつあります.今年度は数理解析研究所で生命流体をフィーチャーした国際研究が数多く開催されることになっています.これに合わせて,本SGではこのTFDAの技術を生物流体の数値計算データや計測データに使って,何か面白いことがわからないかを考えました.TFDAの理論の簡単な理論とTFDAのPythonソフトウェア(Psciclone)のチュートリアルで技術を習得した後,後期には参加者がデータを持ち寄りそれに対して適用しました.

 

活動成果・自己評価

【活動成果】2021 年9 月10 日に横山知郎准教授(岐阜大学)と宇田智紀助教 (東北大学)を講師としてTFDA チュートリアルを実施した.その後,月 1 回程度の定期ミーティングを持ち,参加者がそれぞれデータを持ちよって TFDA の適用可能性を検討した.残念ながら,最後まで適用できた例はなかったが,生命系の多くのデータに検討を行った.特に皮膜オルガネラの細胞内の流れと葉序パターンを記述する反応拡散方程式の数値計算結果に適用できる可能性があり,このSG終了後も継続的に検討を加えることにしている.

【自己評価】チュートリアルは多くの参加者から好評であった.一方で,今回は物理現象としての流体の問題ではなく生命流体という流体力学的にも未知の部分が多い分野の問題をターゲットにしたため最終的な応用成果がでるところまでは至らなかった.しかし,萌芽的で面白い例が多数提案されており継続的な検討がなされればよい成果に結びつくと考える.

 

参加メンバー

氏名 所属 職名・学年
坂上 貴之(代表教員) 数学・数理解析専攻 教授
石本 健太 数理解析研究所 准教授
平島 剛志 白眉センター 特定准教授
その他:学部生4 名、院生(修士)5 名、院生(博士)1 名