企画名

本物を見て考えよう!:脊椎動物の胚観察から数理の可能性を探る

 

参加教員

教員名 所属 職名
高瀬 悠太(代表教員) 生物科学専攻 SACRA特定助教
荒木 武昭 物理学・宇宙物理学専攻 准教授
國府 寛司 数学・数理解析専攻 教授
平島 剛志 医学研究科 講師
高橋 淑子 生物科学専攻 教授
稲葉 真史 生物科学専攻 助教
 

企画の概要

本企画では前年度同様、数理と生物科学との分野横断の実例を学びつつ、脊椎動物の生きた胚を観察し、発生過程で起こる様々な現象について数理モデルで説明できる可能性を議論する。具体的には、発生現象を数理的に解析した研究論文として、物理的な要素(脳脊髄液による圧力)がニワトリ胚の脳の初期形態形成に与える影響に注目した論文 [1] [2] の輪読と討論をオンライン形式で行う。脳の初期形態形成の「実物」観察や解析実習については、代表教員らが撮影した映像を共有する予定である。これらを通して、数理と生物科学との分野横断の実例を学んでいく。
 

[1] “Contraction and stress-dependent growth shape the forebrain of the early chicken embryo, Garcia KE et al., J. Mech. Behav. Biomed. Mater. (2017)”

[2] “Molecular and mechanical signals determine morphogenesis of the cerebral hemispheres in the chicken embryo, Garcia KE et al., Development (2019)”

 

実施期間・頻度

隔週に1回程度、通年

 

TA雇用の有無

要相談。

 

その他、特記事項など

 本SGの大きな目的の一つは、「本物を通じた学生・教員を含めた分野間交流」であり、その目的を叶えるためには対面形式の討論・実習の方が適している。このため、将来的に対面形式の講義や実習が可能になった際は、感染拡大防止に最大限配慮した上でSG活動を実施していきたいと考えている。
 

問い合わせ先

高瀬 悠太 yu-takase*develop.zool.kyoto-u.ac.jp
(*を@に変えてください)
 

スタディグループへの登録は締め切りました。
関心のある方は macs *sci.kyoto-u.ac.jp(*を@に変えてください)までご連絡ください。

 



図1: 今年度のSG活動の題材


図2: トリ胚実習の様子

報告会資料ダウンロード(134 KB)

活動報告

活動目的・内容

本企画では前年度同様、数理と生物科学との分野横断の実例を学びつつ、脊椎動物の生きた胚を観察し、発生過程で起こる様々な現象について数理モデルで説明できる可能性を議論する。具体的には、発生現象を数理的に解析した研究論文として、物理的な要素(脳脊髄液による圧力)がニワトリ胚の脳の初期形態形成に与える影響に注目した論文 [1] [2] の輪読と討論をオンライン・対面のハイブリッド形式で行う。脳の初期形態形成の「実物」観察や解析実習については、代表教員らが撮影した映像を共有する予定である。これらを通して、数理と生物科学との分野横断の実例を学んでいく。

[1] “Contraction and stress-dependent growth shape the forebrain of the early chicken embryo, Garcia KE et al., J. Mech. Behav. Biomed. Mater. (2017)”

[2] “Molecular and mechanical signals determine morphogenesis of the cerebral hemispheres in the chicken embryo, Garcia KE et al., Development (2019)”
 

活動成果・自己評価

 参加学生が学部3回生2名だったため、オンラインと対面とのハイブリッド形式で、題材論文の輪読・議論を5回、トリ胚実習を1回(2日間)行った。題材論文の輪読・議論を通して、脳の初期形態形成(中空の筒構造が領域特異的な膨らみをしていく)において、脳内を満たす脳脊髄液による圧力が果たす役割について理解を深めた(図1)。トリ胚実習(図2)では、脳脊髄液の量を増減させる操作を自分たちの手で試みた。実習を通じて、中空の細ガラス針を脳に挿入する操作(脳脊髄液を減らす手法)の難しさを実感した(実習参加者4名のうち、成功者1名のみ)。また同時に、胚操作によって脳形態に影響が現れたかどうかを解析する難しさも理解できた。脳脊髄液を増やした場合も脳形態に現れる影響は小さく、題材論文で用いていた光干渉断層撮影(OCT)の重要性がよく分かった。
 今年度は後期からのSG活動だったが、オンラインと対面とを上手く組み合わせて論文輪読・議論を進められたと思う。来年度もこの活動形式を継続しつつ、参加メンバー間での活発な議論をより進めていきたい。また、今年度や昨年度のSG活動を踏まえ、来年度はトリ胚組織にかかる張力や圧力などを実際に測定する実習を行いたいと考えている。

参加メンバー

氏名 所属 職名・学年
高瀬 悠太(代表教員) 生物科学専攻 SACRA特定助教
國府 寛司 数学・数理解析学専攻 教授
荒木 武昭 物理学・宇宙物理学専攻 准教授
高橋 淑子 生物科学専攻 教授
稲葉 真史 生物科学専攻 助教
平島 剛志 生命科学研究科
白眉センター
講師
市岡 宏樹 生物科学専攻 B3
加々尾 萌絵 生物科学専攻 B3

 


[SG3]ニワトリ胚観察実習(2021年3月2-3日)

 SG3「本物を見て考えよう!:脊椎動物の胚観察から数理の可能性を探る」では、本SGの題材論文“Molecular and mechanical signals determine morphogenesis of the cerebral hemispheres in the chicken embryo, Garcia KE. et al., Development (2019)” を参考に、ニワトリ胚の初期脳形態を観察しました。参加学生たちは自分達の手でハサミや注射器を扱い、孵卵約1.5日目の卵の中にいるニワトリ胚、そして、論文で注目されていた前・中・後脳の形態を自身の眼で観察しました。加えて、論文内で行われていた脳脊髄液を増減させる実験操作も試みました。結果的に論文で行われていた実験の再現は難しかったですが、シャーレ上でニワトリ胚の発生を進め、特殊な顕微鏡で脳形態の観察・解析を行った理由が非常に良くわかりました(脳形態を観察・解析するために卵からシャーレに移す操作によって脳脊髄液量が変化している可能性が見えた)。

  今回の実習を通して、参加学生たちは実際のニワトリ胚の美しさや教科書や論文で書かれている内容を「本物」で観察・検証することの難しさなどを実感してくれたと思います。
 (文責 高瀬悠太)