企画名

動的な秩序の発展を追う

参加教員

教員名 所属 職名
松本剛(代表教員) 物理学・ 宇宙物理学専攻 助教
市川 正敏 物理学・宇宙物理学専攻 講師
小山時隆 生物科学専攻 准教授
藤定義 物理学・ 宇宙物理学専攻 准教授

企画の概要 実施期間・頻度

概要

時間的、あるいは空間的に規則性な特徴が現れると、その理由を知りたくなります。その一方で、完全 に周期的な運動や、静的で完全に対称的な空間パターンは理論的な理想化の産物で、それのみを道具としていては、実際の現象を十分に把握できないように思えます。この SG では、古典的な方法論をふま えつつその拡張をめざして、生物系や物理系の実現象に見られる秩序を扱います。特に、動的に発展す る秩序について、いくつかの具体例をとっ て新しいアプローチを探ります。例えば、ドローンの空撮画 像を用いて、植生の中間的な空間スケールの季節変動を追うといったテーマを考えています。

実施期間・頻度

授業期間中に通年で月2回程度のゼミ(主に研究討論)、 半期に1度程度の野外観測活動。

TA雇用の有無

参加学生が希望する場合には、ゼミ時間を雇用時間とする。

その他,特記事項など

本SG企画は、2018年度のSG8「数理で探求する生命現象の新たな描像」 の継続と発展になっています。

問い合わせ先

松本 剛 takeshi*kyoryu.scphys.kyoto-u.ac.jp
(*を@に変えてください)
 

スタディグループへの登録は締め切りました。
関心のある方は macs *sci.kyoto-u.ac.jp(*を@に変えてください)までご連絡ください。


図1: ドローンで撮影した写真から得た砂丘面高さの関数。座標の単位はいずれもメートル

 

図2: 鳥取砂丘での風紋形成の実地実験

 
 

図3: SG成果発表会の発表スライドより(知床での観測の様子(ドローンの飛行直前とタイムラプスの撮影中))

 

図4: 流氷の写真(左)とエッジ検知で抽出した流氷の形(右)


 

報告会資料ダウンロード(11.7MB)

活動報告

活動目的・内容

時間的、あるいは空間的に規則性な特徴が現れると、その理由を知りたくなります。その一方で、完全に周期的な運動や、静的で完全に対称的な空間パターンは理論的な理想化の産物で、それのみを道具としていては、実際の現象を十分に把握できないように思えます。このSG では、古典的な方法論をふまえつつその拡張をめざして、生物系や物理系の実現象に見られる秩序を扱います。特に、動的に発展する秩序について、いくつかの具体例をとって新しいアプローチを探ります。例えば、ドローンの空撮画像を用いて、植生の中間的な空間スケールの季節変動を追うといったテーマを考えています。

 

活動成果・自己評価

前期6月から8月にかけては、2週間に一度の定例会でD1およびM2のメンバーが研究紹介を行った。他分野の人にもわかるように問題意識を説明してもらうとともに、分野横断的な議論を行った。
後期は、本SGのテーマである「実現象にみられる秩序に対する新アプローチの模索」として2019年10月の下旬に鳥取砂丘の風紋観測を2日間にわたって行った。この目的はドローン2台をつかって上空から風紋パターンを撮影し、写真測量法を適用することで砂丘表面高さを定量的に測定することである。ドローンを主に測量モードで航行させて砂丘表面の多数の写真を撮影した。帰学後にこの写真を写真測量法のソフトウエアで解析した。この結果、我々は砂丘表面高さを空間2次元の座標の関数として構成できることができた (図1)。このデータはジオリファレンスされたもので地理座標(北緯、東経等)との対応もついている。今回の測定では、ドローンの飛行高度と長さの解像範囲を調べることも目的とした。信頼できるのは2桁程度であった(しかし、この点は改善の余地がありそうである)。ドローンでなければ得られない、この風紋の2次元パターンのデータに我々はフーリエ解析を適用した。この結果、特徴的なべき則が風紋の基本波長よりも大きいスケールにあることがわかった。また、鳥取砂丘で砂を一定量ずつ風にのせて風紋のミニチュアをつくる実験も現地で行い、風紋パターンの時間発展の様子がビデオに記録された(図2)。この解析は今後の課題である。11月から12月の定例会では風紋データの解析について議論、検討を行った。
また、次の実現象として我々はオホーツク海の流氷を選び、そのサイズ分布などの解析を目標とした。2020年2月中旬に2日間をかけて網走、知床の海岸でドローン2台をつかって砂丘の場合と同様の観測をおこなった(図3)。帰学後に、写真の画像解析からエッジ検出をおこなって各流氷の上空から見た面積や形状の特徴付けをおこなった(図4)。サイズ分布については、先行研究で調べられたやや大きいスケールでのべき分布と整合的な結果が得られている。サイズの解像範囲はこの場合は3桁を超える程度であった。また、今回も流氷を海岸からタイムラプス撮影し、時間発展の様子も記録した。この解析は形状の特徴付けとあわせて今後の課題となろう。
さらに2020年3月に浜松の中田島砂丘の風紋観測をおこなった。方法は鳥取砂丘の場合と同様である。測定精度の改良、および、先に得たべき則の普遍性をしらべることが目的である。結果は現在解析中である。
ドローンをつかった測量技術は、ドローンの飛行制御性能の発達、ドローンカメラの高性能化、コンピュータビジョンの発達、地理情報システムの整備等により現在急速に普及している。特に、本SGではドローン測量がいままで観察されていなかったスケールにおける新しい秩序を発見する手段として成熟しつつあることを各メンバーが身をもって体験することができた。また、得られたデータを複数のメンバーでにぎやか楽しんで解析することもできた。こうした点で本SGは大成功であった。

 

 

参加メンバー

氏名 所属 職名・学年
松本 剛(代表教員) 物理学・ 宇宙物理学専攻 助教
市川 正敏 物理学・ 宇宙物理学専攻 講師
小山 時隆 生物科学専攻 准教授
藤 定義 物理学・ 宇宙物理学専攻 准教授
宮崎 真一 地球惑星科学専攻 教員
松村 大毅 その他(理学研究科以外など) B2
篠 元輝 生物科学専攻 D1
渡邊 絵美理 生物科学専攻 M1
高野 友篤 生物科学専攻 M1
前田 玉青 生物科学専攻 M2
佐藤 慶暉 その他(理学研究科以外など) B2
山下 達也 物理学・宇宙物理学専攻 M1
原 誠人 数学・数理解析専攻 M1
吉永 彩夏 生物科学専攻 M1
磯田 珠奈子 生物科学専攻 D1
中澤 淳一郎 生物科学専攻 B3
幕田 将宏 物理学・宇宙物理学専攻 D4
須田 沙織 物理学・宇宙物理学専攻 D2
吉田 純生 生物科学専攻 M1
樋沢 規宏 物理学・宇宙物理学専攻 M1
上野 賢也 生物科学専攻 D2
竹中 亮太 物理学・宇宙物理学専攻 M2
糀谷 暁 化学専攻 M1
福島 理 物理学・宇宙物理学専攻 M1
田口 貴哉 物理学・宇宙物理学専攻 M1