物理学・宇宙物理学専攻(宇宙物理学教室) 助教 川島 由依
1995年、太陽以外の恒星を回る惑星「系外惑星」が初めて発見され、宇宙には太陽系以外にも惑星系が存在することが明らかとなった。実は、惑星と恒星の中間的な質量をもつ天体「褐色矮星」が(疑いようもなく)発見されたのも、同じ1995年である。望遠鏡を用いてこうした天体の分光観測を行うと、その外側を覆う大気の性質(化学組成や温度、雲の有無など)を知ることができる。これらの情報は、多様な大気現象(例えば、高温環境では水蒸気ではなくシリケイトからなる雲が生成されていると考えられている!)を理解する手掛かりとなるだけでなく、惑星質量天体の形成・進化や環境、さらには我々の地球や太陽系の普遍性・特殊性を知る上でも重要である。
我々は最近、ハワイにあるすばる望遠鏡の近赤外高分散分光器IRDを用いて、真に褐色矮星質量をもつ天体として初めて発見されたGl 229Bの分光観測を行った。系外惑星・褐色矮星としては中間温度帯(約600℃)の大気に対し、大気中の分子による吸収線1本1本を分解可能なレベルでの高い波長分解能のスペクトルを高シグナル・ノイズ比で取得することに成功した。解析の結果、Gl 229Bが実は2つの褐色矮星から成る連星系である(ちなみに、2つに分かれても共に褐色矮星質量の天体であったため、Gl 229Babが初めての褐色矮星質量天体であることには変わらない)ことを独自に確認できたほか、現状の系外惑星大気観測のボトルネックとなっている、高温環境下での分子の吸収線リストを観測的に検証することにも成功した (Kawashima et al. 2025, The Astrophysical Journal, 988, 53)。
今後の望遠鏡・観測装置のさらなる発展によって、いつの日か、より低温な系外惑星質量天体の大気の高精度な高分散スペクトルも見てみたいものである。
図:すばる望遠鏡の近赤外高分散分光器 IRD のファイバー入射モニター用 CCD カメラによ る Gl 229 系の撮像 (Kawashima et al. 2025, The Astrophysical Journal, 988, 53)


