物理学・宇宙物理学専攻(宇宙物理学教室)特定助教(白眉センター)松本達矢

画像
Tatsuya_Mastumoto

卒業してから約5年ぶりに北部キャンパスに戻って研究できる機会を得た。コロナ禍を経て多少の変化はあるものの、キャンパス全体の雰囲気はやはり懐かしく感じられ、学生の頃の記憶が呼び起こされる。当時の習慣の一つに研究室の先輩や同級生と銭湯に行き、些細な日常での疑問や研究での悩みなどを話し合うというものがあった。ある日の話題は日常生活に必要最低限な数学は何か?というものだった。もちろん日常の研究生活では微積分やベクトル解析くらいまでは必須であるが、研究活動を除いた日常生活に限った話である。私の記憶では四則演算で十分であろうということで意見の一致を見たと思う。
 数日後、研究室での懇親会(か何か)に関する案内のメールを受け取った。参加費は学生とポスドク・スタッフで傾斜がかけられたよくある設定で、参加する旨を伝えたが他の学生はどれくらい参加するのだろうかと少し気になっていた。後日、集計を伝えるメールが回ってきたが、そこには参加者の名簿ではなく参加人数と集金額の合計のみが記載されていた。これはまさに学生とポスドク以上の参加人数を解とする連立方程式を与えており、日常生活で四則以上の数学を要求される(自身にとっては初めての)衝撃的な経験であった。日常生活でも(知的?)好奇心を維持していればいくらでも高度な数学は必要になるのだと考えを改めると同時に、四則演算のみで事足りるような日常生活を送ってきた自身を恥じた。ちなみに嬉々として連立方程式を解き、参加人数が整数でない解を得て狼狽したのだが、奇特なスタッフの一人が少し多めに参加費を払ってくださったとのことである。