本講演会は在職中53歳の若さで他界された玉城嘉十郎先生のご意志に基づいて、没後30年にあたり、ご遺族より奨学のために多額のご寄付をいただき開催されている、公開の学術講演会です。玉城先生は明治19年(1886年)にご生誕、京都帝国大学理学部において理論物理学を講じられ、その門下からは新しい分野を拓く数多くの物理学者が輩出されました。第1回は大学紛争のさなかの昭和44年(1969年)秋、湯川秀樹先生、朝永振一郎先生、寺本英先生を講演者に招いて開催されました。以後回を重ね、さらに2009年度より湯川記念財団からの寄付を得て共催となり、本年度は60回目の開催となりました。

講演のテーマは必ずしも既存の専門にとらわれず、明日の学問への展望をひらくものを、と心がけて選ばれています。この玉城記念講演会は、理学部・理学研究科及び学内の他研究科の学生、教職員、卒業生や元教員、学外の専門の研究者、さらには一般の方々まで幅広い聴衆を集めています。特に新型コロナウイルス感染症の影響のもと、オンライン開催が始まってからは海外や中高生の参加者も現れ、また講演後も活発に質疑応答が行われております。

 

第60回玉城嘉十郎教授記念公開学術講演会(昨年度に引き続きオンラインで実施)は、2021年12月20日(月)午後3時より、京都大学北部総合教育研究棟1 階益川ホールをZoom配信会場として、講演者、実行委員、及び対面参加を希望する理学研究科の教員など20名程度が集まり開催されました。玉城嘉十郎教授記念公開学術講演会 実行委員長の清水以知子准教授による開会の辞に続き、湯川記念財団の九後 太一 代表理事から、玉城記念講演会開催の経緯が紹介されました。この講演会は玉城先生の亡くなられた後、玉城家に伝わる俵屋宗達の襖絵が、国に買い上げられたことを機会に始まったもので、今回、その絵が京都国立博物館に所蔵されている「草花図襖」であることが写真と共に披露されました(以下参照)。 

ご講演は『大気変動の予測可能性とデータ科学』を共通テーマとして、余田 成男 国際高等教育院副教育院長・京都大学名誉教授による「不確実性を伴う数値天気予報と気候予測」、三好 建正 理化学研究所主任研究員・京都大学大学院理学研究科連携教授による「数値天気予報の要:データ同化とその展望」の2つが約2時間にわたって配信されました。このテーマは昨年ノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎博士の地球温暖化のシミュレーション予測とも関係が深いトピックで多くの人の関心を集め、オンラインには全国から115名の参加者がありました。また、教員や理学MACSプログラムの参加学生などから様々な質問がチャットで寄せられるなど盛況でした。最後に國府 寛司 理学研究科長から、講演者、財団、関係者への謝辞が述べられ、閉会となりました。

今回のご講演の動画は京都大学オープンコースウエアとして、近日中に公開される予定です。また現在、玉城記念講演会50周年を記念して、記念誌の出版へむけて準備を進めていることもあわせてお知らせいたします。

講演要旨