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第3回

森脇:逆に、山本さんに質問させてもらっていいですか。もちろんいろんな細かいことは言えないと思うんだけど、どんな内容の相談で来る学生が多いですか。学習がうまく進まないだとか、あるいは、変な言い方だけども恋愛のことであったりとか…。

山本:そうですね。来られる方はたいてい学業のことについては何か言われます。悩みがあると、学業の方に何か支障が出ることが多いですから。その他に言われることは、それこそ学生さんによっていろいろですね。そして、恋愛で悩めるというのは、同世代の異性と関係が結べているという点で少しほっとするところもあります。というのも、ここは他の学部に比べて人間関係がやや希薄になりがちのようで、人間関係がややこしいというよりはむしろ人間関係があまりないというような話が多いです。

寺嶋:例えば、学業について行けないという学生に対しては、どうアドバイスするんですか。

山本:本当に勉強のことがメインということであれば、それぞれの教室から一名ずつ出て下さっている相談室員の先生にお願いして、その学生さんと話をしていただいたりしています。それこそ、三輪先生にも何度も来ていただいて「一回生の時、僕はこんなんだったよ」というような話もしていただきました。

森脇:さっきの、人間関係が希薄という話ですが、そうすると相談室でやっておられる「遠足に行きましょう」なんていうのは、そのひとつのきっかけを作ろうということですか。

山本:あ、はい、そうですね。もちろん、遠足がすべての学生さんに向いているかというとそういうわけではないんですが、たとえば、自分から対人関係を積極的に結んでいくというのは苦手で、人間関係が比較的希薄な理学部ではなかなか対人関係が結べなかったけれども、なにかきっかけがあったら対人関係を結ぶことができるという人たちもいますよね。また、何らかの理由で授業に出ない期間が長くあると、対人関係のきっかけというのがなかなか得られなくなります。そういった学生さんたちが何人もいらっしゃるということがわかってきて「じゃあいっぺんみんなでどこか行ってみたら面白いんじゃないかな」と、とても単純に考えました。最初は10月に動物園に行きました。みんなやっぱり理学部なので動物園には惹かれるみたいで「あ、動物園ですか。じゃあ行きたいです」というようなことになって、動物園に行って楽しい一日を過ごしました。次は12月に、八ッ橋手焼き体験ということで、井筒八ッ橋に行ってみんなで焼き子の衣装に着替えて八ッ橋を焼きました。一回生から修士の学生まで集まって、みんなで話をしているうちに「あ、僕も昔そうだったな」みたいな話なんかもできたりして良かったです。遠足は、必ずしも対人関係が苦手でなくても、普段出会えないような人に出会ってみようとか、行き先に興味があるので行ってみようという人も大歓迎ということでやっていて、これからもちょくちょくやっていこうかなと思っています。

森脇:中高の間からずっと、勉強ができてたから親も何も心配しなかったんだろうね。

山極:大学で対人関係ができないと、家に居て高校に通っている時よりよっぽど孤独になっちゃう。下宿と学校を往復するだけで、家の人とも会わないし、幼なじみとも会わないし、近所の商店街で顔なじみの人も居ない。完璧な孤独。それは確かに辛いかもしれない。

長谷:今話を聞いていて自分のことを思い出してみると、僕はサークルで友達ができて、クラスの人たちは必ずしも友達というわけではないというスタンスだったんです。サークルに入る人はすごく多いと思うんだけれど、大学で対人関係ができない人というのはサークルにはあまり興味がないんですかね。

山本:う~ん、そうですね。サークルに入っている人で「大学で対人関係が結べません」というのはほとんど聞かないですね。

長谷:まあ、そうでしょうね。サークル入れば、だいたいね。

寺嶋:少人数担任面談で僕がいちばん最初に聞くのは、サークル入ってますかということです。そして、入ってない人には入ったほうがいいよ、とアドバイスしています。

山極:相談室サークルっていうのはどうですか?

山本:なんか、遠足でそういうのが出来かけているなという感じはあります。ある学生さんが、「僕はサークル入ってないけど、これに入れたからいいか」みたいなことを言ってましたね。

寺嶋:なるほど。じゃあ、入ってない人には、これから相談室サークルに入るように言ってみようかな。

山本:そうですね。ただ、少ない人数でやっているから安心して話せるというところもあると思うので、規模については考えなければいけないんですが。大勢になるようだったら、いくつかに分けて遠足をしてもいいかもしれませんね。

山極:いくつか、八つ橋コースとか動物園コースとか決めて募集して、興味があったら気軽に参加してくださいみたいなことをやってみたらいいんじゃないですかね。

山本:あ、そうですね。そしたら、引率とかも必要になってくるので、その場合はよろしくお願いします。

三輪:でも、先生に声かけたら、行こうかっていう人は、けっこういるかもしれませんね。

山極:いくつか行き先をリストアップして、興味のありそうな先生と日にちを決めて、公募して、じゃあ、何人までですみたいな感じで。そうやったらいいんじゃないですかね。

森脇:大文字辺りぐらいやったらね、2時間もあったら帰ってこれるもんね。

三輪:相談室でそういうのをやるっていうのは、今のところ理学だけですね。

森脇:全学的に見ると、理学は相談室もあって、少人数担任もやってて、社会交流室もあって、いろんな意味で先進的だと思いますよ。

三輪:常見さんのところもいろいろやってらっしゃるんですよね。

常見:はい。けっこう元気がある大学生たちと一緒に催しをしたり、いろいろやっています。つい最近は京都府北部に泊まりがけで行って科学教室をやってきました。

三輪:何人ぐらいの学生が関わっているんですか。

常見:博士課程まで入れると50人くらいが登録してくれていて、「この日空いている人」と募集をかけると、多いときで20人くらいが実際その日に丸一日働いてくれたりします。朝8時集合で夕方5時くらいに終わって、後片付けをして、6時からちょっと飲み会をするというような感じで、12時間くらいずーっと一緒にいます。かなりハードな活動です。

山極:すごいな。

三輪:さて、それでは、だいぶ時間が遅くなりましたので。

 

(第3回目座談会 終わり)

 

編集後記:教科書(既に分かっていること)を学ぶことに重きを置く高校までの勉強とは違って、大学に入ってからは、まだ分かっていないことに挑むことになります。その分、苦労や挫折感も大きくなってしまうともいえるのですが、そこであきらめてしまわずに苦労を積極的に引き受けていくと、その経験はのちのち自分だけの大事な財産になっていくのだなあ、と聞いていて思いました。しっかり苦労して、大きくなれるといいですね。


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