企画名
自然界に潜む規則性を探る |
参加教員
教員名 | 所属 | 職名 |
---|---|---|
坂崎貴俊(代表教員) | 地球惑星科学専攻 (地物) | 准教授 |
大谷真紀子 | 地球惑星科学専攻 (地物) | 准教授 |
宮崎真一 | 地球惑星科学専攻 (地物) | 教授 |
市川正敏 | 物理学・宇宙物理学専攻 (物理1) | 講師 |
小山時隆 | 生物科学専攻 (植物) | 准教授 |
松本 剛 | 物理学・宇宙物理学専攻 (物理1) | 助教 |
企画の概要
地球上の自然現象は、さまざまなリズムや規則性を示す。例えば、大気や海の流れは太陽や月の影響を受けて明瞭な日・季節変化を見せるし、我々生物の活動には体内リズムが存在する。空間的な構造に注目すれば、雲や葉の形状がフラクタル構造を持つことは良く知られている。このように自然現象に広く内在する規則性を、本SGのメインテーマに据える。
近年の観測技術の進歩に伴い、多様な自然現象の時空間的な動態を、手軽に、かつ、高分解能で測定することが可能となってきた。一方で、各々の現象は互いに影響を及ぼし合う(例えば気象-生物)ことも分かってきており、分野融合的な視座を持つ重要性が増している。
本SGでは地球科学・物理学・生物学といった多様なバックグラウンドを持つ教員のもと、フィールド観測をベースにして、自然界に潜む規則性を複眼的に読み解く。具体的には、ドローンによる撮影・環境計測やデジタルカメラ定点観測などを用いて、雲や波の変動、地質構造、生物活動などに現れる規則性を観察し、それらを生み出す要因について議論する。
実際に本SGはこれまでの経験で、ドローンを用いた計測技術や3D再構成技術を養ってきた。これらの知見を本年度SGでも活用し、植物園及び演習林での観測を引き続き行うほか、アプローチが難しいフィールド(水上、火山、孤島、湿地など)での遠隔計測に応用したい。
説明会資料
4/28(金)のスタディグループ説明会資料はこちら
実施期間
通年
頻度
2〜3週間に1度の頻度でゼミや実習を実施。ゼミはドローンの練習や環境計測も挟みつつセミナー形式から始める。参加者の人数にも依存するが、教員の紹介が一巡したのち参加者のディスカッション/ディベート形式になる様に持って行きたい。
その他
TA雇用を希望。新型コロナの状況によるが、セミナー招聘(1~2回)やドローンによる観察のための研修旅行を企画したい(1〜3回、可能なら夏季)。本計画は2022年度SG6の後継。
問い合わせ先
坂崎貴俊 zaki *kugi.kyoto-u.ac.jp
(*を@に変えてください)
スタディグループへの登録は締め切りました。
関心のある方は macs *sci.kyoto-u.ac.jp(*を@に変えてください)までご連絡ください。
活動報告
活動目的・内容
本SGでは地球科学・物理学・生物学といった多様なバックグラウンドを持つ教員のもと、フィールド観測をベースにして、自然界に潜む規則性を複眼的に読み解くことを目的としている。2週間に1回程度の頻度でゼミでの議論や解析の発表と解説、理学部植物園でのドローン飛行や測定の練習を行ったほか、フィールドワークも数回行った。これまでのSG活動や今年度の練習で培ったドローンを用いた撮影技術や環境計測技術を活用し、地球科学的な事象を主なターゲットとした観測と解析を実施した。
活動成果・自己評価
活動成果
(1) フィールド科学研究センター芦生演習林
芦生演習林は由良川の上流に位置し、急峻な谷に位置する。現地職員の方の協力も得て、ドローンを用いた植生の上空撮影・気象観測を行った。
(2) 立岩(京都府京丹後市)
「立岩」は京丹後の砂浜に聳え立つ高さ20mほどの巨大な一枚岩で、柱状節理が綺麗に見えることで知られる。ドローンの強みを生かして、立岩を様々な角度から撮影し高精度な3次元モデルを作成することができた(図1)。
(3) 鹿児島・宮崎
地球科学的・動物学的に珍しいスポットを巡り、ドローンを用いて観察・観測した:(i) 桜島火山の観測(図2)、(ii) 益丸砂浜における海洋波の砕波と、海上-陸上の大気観測、(iii) 都井岬における野生馬の観測のチュートリアル・実践(前田玉清博士(総研大)による)、(iv) 幸島での野生猿の観察(鈴村崇文氏による解説)、(v) 鬼の洗濯岩(砂泥互層)の撮影、など。(ii)の観測では、いわゆる「海風」循環の熱的構造を捉えることに成功し(図2)、さらに波浪の解析(波数スペクトルなど)にドローンで撮影した写真・動画が有用であることも分かった。さらに(ii)では、地形によって風速分布が異なることに注目し、数値モデル(埋め込み境界法)を用いた再現を試みたメンバーもいた。
(4) 和歌山
(3)-(ii)の結果を受けて、ドローンを用いた海洋上の観測に将来性を感じ、和歌山県の海岸域において更なる観測を行った:(i) 煙樹海岸(和歌山県美浜町)における洋上-陸上大気の気象観測と波浪の観測、(ii) 白浜実験所が管轄する「畠島」(無人島)をベースとした洋上気象観測。現在結果を解析中である。
自己評価
コロナの制約もなくなり、フィールドに出ることで「自然を丹念に観察しその摂理に想像をめぐらす」という本SGの基本理念を大いに実践することができた。例えば、「立岩」や「鬼の洗濯岩」の観測から、地質学的なパターン構造の特徴と生成要因(柱状節理・砂泥互層)について理解を深めることができたし、洋上-陸上の大気同時観測から「海陸風循環」の熱構造を観測的に捉えることにも成功したことが特筆される。このように、ドローンによる観測・計測により、自然現象を鳥瞰的視点から眺め、そのマクロな構造を丸ごと捉えて解析できるという大きな利点を持つことを再認識できた。今回の成果を起点とした更なる発展的研究も期待される。実際、地形パターンの観察は、次年度のSG活動のメインの一つとして引き継がれる(海陸風の観測も非常に興味深く、是非何らかの形で発展させたい)。
反省点としては、(これは毎年のことであり仕方ないのだが)ドローンの操縦訓練に多くの時間を割く必要があり、教員のセミナーなど座学に十分な時間を取れなかったことが挙げられる。
図1:ドローン撮影写真から生成した立岩の3次元モデル。
図2:ドローン気象観測で得られた陸上(橙)と海上(青)の気温鉛直プロファイル(益丸海岸, 2023/11/23 12時)。高度~50 m以下では陸上気温が海上気温より高く、それ以上では逆になっている。海風の気温構造を反映しているものと見られる。
参加メンバー
氏名 | 所属 | 職名・学年 |
---|---|---|
坂崎貴俊(代表教員) | 地球惑星科学専攻 (地物) | 准教授 |
大谷真紀子 | 地球惑星科学専攻 (地物) | 准教授 |
宮崎真一 | 地球惑星科学専攻 (地物) | 教授 |
市川正敏 | 物理学・宇宙物理学専攻 (物理1) | 講師 |
小山時隆 | 生物科学専攻 (植物) | 准教授 |
松本 剛 | 物理学・宇宙物理学専攻 (物理1) | 助教 |
位田 稜弥 | 理学部 | B2 |
小野 基紀 | 物理学・宇宙物理学専攻 | M2 |
髙岡 涼 | 理学部 | B3 |
仲俣 翔登 | 地球惑星科学専攻 | M1 |
野末 陽平 | 地球惑星科学専攻 | D1 |
林 大寿 | 化学専攻 | D2 |
眞砂海斗 | 地球惑星科学専攻 | M1 |