動物学教室の歴史・概要
動物学教室は大正10年(1921)に動物系統遺伝学、動物生理生態学の2講座として発足した。以来次第に講座・研究室も増え、時代の流れとともに研究テーマも変わってきたが、自然史や野外研究に大きな比重がおかれていることは変わりない。現在、自然史学、動物科学、人類学の3講座に7分科がある。3講座の研究分野は、動物系統学、動物行動学、動物生態学、自然人類学、人類進化論、動物発生学、環境応答遺伝子科学からなり、研究内容は多岐にわたる。動物学系としては、3協力講座、および連携・併任の1分科で構成されている。
動物を対象とする領域は非常に広いために、各分科は学内の他の研究科や他大学、研究機関と密に協力しながら、教育と研究を行っている。その主たる目的は、動物をその環境と合わせて歴史的、総合的に理解することであり、ミクロとマクロの視点から多様なアプローチと方法論を駆使してその課題に取り組んでいる。動物学教室は常に先端的な研究を推進するとともに、これまで独創的な発想からさまざまな新しいテーマや学問領域を切り開いてきた。これは京都大学の自由な学風と闊達で創造的な討論の賜であり、大学院生にも積極的に研究に参加し、自主独立の精神を養うことを奨励している。実験系とフィールド系では研究の方法論が異なるが、早い時期から研究者としての発想、企画、検証、理論構築の能力を磨くように指導を行っている。修士課程では、課題に応じて適切な実験を実行できる技術や知識、フィールドワークを行うための基礎知識やデータの記録法を習得してもらうが、何よりも大切なのは自分で興味を持ったテーマや対象に魅力のある研究計画を立てられるかどうかということである。そのため、仮説検証型ではなく問題発見型の方法論を推奨することもあり、なるべくそれぞれの学生の個性と興味に合った研究を遂行できるよう個人指導を重視している。博士後期課程では、自らが先端的な課題を設定し、それを解く研究手法を確立し実行に移すことが主眼となる。さらに、採取したデータを適切に分析し、英語の論文にまとめて国際誌に投稿したり国際学会で発表したりできるまで徹底的な指導を行う。また、研究者以外にも科学ジャーナリストや教育機関、博物館、行政機関などへ進路を希望するものには、各人の興味と能力に応じて助言や指導を行っている。
動物学教室の歴史
- 1897年6月 京都帝国大学理工科大学設置
- 1912年 春 川村多実二京都帝国大学医科大学生理学教室に赴任
- 1914年7月 理工科大学が分けられ、理科大学、工科大学となる
- 1914年9月 京都帝国大学医科大学附属大津臨湖実験所設置
- 1919年2月 理科大学は理学部と改称(川村多実二助教授)
- 1919年7月 生物学科設置、動物学講座(池田岩治教授)
- 1921年4月 動物学第二(生理・生態学)講座(川村多実二助教授、5月教授)増設に
- ともない動物学講座は動物学第一(系統・遺伝学)講座と改称。
- 生物学科を動物学科と植物学科に再編(動物学教室の発足)
- 1922年4月 大津臨湖実験所が理学部附属となる
- 1922年7月 理学部附属瀬戸臨海実験所設置
- 1929年12月 動物学第三(発生生物学)講座開設(岡田要講師、1930教授)
- 1933年10月 理学部附属木曽生物学研究所設置
- 1947年10月 京都帝国大学を京都大学と改称
- 1959年3月 放射線生物学講座開設(本城市次郎教授)
- 1962年10月 自然人類学講座開設(今西錦司教授)
- 1964年4月 理学部附属植物生態研究施設設置
- 1967年4月 生物物理学科設置
- 1981年7月 人類進化論講座開設(伊谷純一郎教授)
- 1991年4月 大津臨湖実験所、植物生態研究施設を母体に生態学研究センター設立
- 1994年4月 理学部の9学科を廃止し理学科に改組
- 1995年4月 改組により大学院院理学研究科を部局化、生物科学専攻設置。
- 動物学系は自然史学、動物科学、人類学の3大講座に改編
- 2003年4月 瀬戸臨海実験所がフィールド科学教育研究センター所属に改組
現在も、生物科学専攻の中で、自然史学、動物科学、人類学の3大講座のまとまりとして動物学教室が存続している