元生物科学専攻(生物物理学系)所属・名誉教授 阿形 清和

 
 

国立の研究所、理研、公立大学、国立大学、私立大学と渡り歩いたが、結局、京大には学生として学部/大学院の9年、教授で11年と合計20年もの間お世話になった。何とも長くお世話になった。そして、名誉教授にしてもらえたのだからうれしい限りである。ましてや一度、理学研究科の教授会で名誉教授の撤回決議がなされた経緯があるだけに、感慨深い名誉教授となった(別に悪事を働いたわけではなく、学位審査のために客員教授になろうとしたら、すでに可決されていた名誉教授を外さないといけなくなった次第)。

 

ここでは、私が学生だった前半の京大と教授だった後半の京大を比較してみたい。一番変わった点は、前半はカリキュラムが本当に自由で何でもあり状態だったのに、後半に帰ってきた時には単位制が結構ガチッとしていた点である。成績のつけ方もしかりで、<合格/不合格>という成績しかなかったのに、最後にはGPAが導入されるという大変わりとなった。

 

また、旧教養の講義で共通の教科書で教科書に沿った講義をするようになっていたのには思わず<えっ>と目玉が飛び出た。自分は京大で教科書を使った講義とか受けたことがなかったからである。それが京大のカラーだと刷り込まれてしまっていた。さらに、3回生に進学する時に専攻の振り分けができていたのにも驚いた。前半時代には、主に○○を専攻と言う表現はあったと思うが、無所属というのもあり、理学部の良さ(エエ加減さ)を絵に描いたような制度だった。前半時代は、総長は医学部と工学部から交互に出るのが普通だったのに、後半には、何と理学部から2人も総長が輩出されたのだから、これにも驚かされた。

 

不思議なことは、そんな前半時代を過ごした理学部の同級生達が、大手上場企業の取締役や会長になっている点である。これにはもっと驚かされた。恐るべし京大理学部である。前半と後半で大きく変わった感じはするものの、京大理学部を目指してやってくる学生、あるいは育った学生が、これからも活躍してくれれば名誉教授としてこんなにうれしいことはない。頑張れ京大理学部/理学研究科。