藤田 遼

 

雪の結晶、サクラの花弁の配置、ダイアモンド分子の構造など自然界にはいたるところに対称性が現れます。さらには物理法則といった目には見えないものにも対称性は潜んでいます。

 

ところで、対称性とは厳密には何なのでしょう。例えば、円はどの方向から見ても同じ形に見え、対称性が高いと感じます。それは円が中心まわりの回転という変換に対して不変だからです。数学では「ある一定の構造を不変に保つような変換の集まり」こそが対称性であると見なします。このような「変換の集まり」を抽象的に捉えた概念が「群」です。例えば、平面の回転全体は群になり、円の対称性を捉えています。

 

逆に、抽象的に群から出発して、その対称性の現れ方について調べると、そこには基本的なパターンがあることが分かります。地震波の解析などに使われる「フーリエ解析」の原理にはそのような視点が生かされています。フーリエ解析の原理とは、勝手な周期関数をsin(nx), cos(nx)という基本的な関数の和の形に分解できるというものです。これは、音を「どの高さの音がどのくらいの大きさで鳴っているか」に則して和音の形に分解することによく似ています。先ほどの平面の回転全体のなす群の対称性は周期性として現れます。フーリエ解析の原理は、この回転のなす群の対称性から来ており、その基本パターンがsin(nx), cos(nx)という基本的な関数に対応します。

 

対称性の視点から数学の対象を解析することは非常に基本的なもので、この方向の研究は現在も活発に進められています。