西村 理沙

 

2015 年9 月、米航空宇宙局(NASA)は「現在の火星表面に液体の水が存在する証拠を掴んだ」と発表しました。水が液体で存在できる環境は生命体が存在できるだろう、といえます。火星に生命体がいる可能性がぐっと高まったのです。

 

NASA が2005 年に打ち上げた探査機マーズ・リコネッサンス・オービターは、火星を周回して高い解像度の火星表面画像を撮影しています。その画像によって、黒い筋状の地形が発見され、それらは夏になると長くなり、冬になると消えてしまうことが分かりました。研究者らはその黒い筋が「液体の水が流れたり滲み出たりすることで現れている」のではないかと考えました。しかし夏と言っても地表の温度は-23℃で、純水は液体で存在できません。

 

研究者らは探査機に搭載された分光計を用いて、物質がはね返す光を分析することで、黒い筋の表面にある化学物質を推定しました。すると暖かい時期だけそこに水和塩が存在するようだということが分かりました。

 

水和塩は水分子を含む結晶で、それらが溶けた水が蒸発すると、結晶として地表に残ります。また、水和塩が溶けた水は約-70℃まで液体でいられると考えられます。そのため、研究者らはこの結果を「火星に液体の水が存在する証拠」だと主張しました。

 

火星において、過去に水があった形跡や、地中に氷があることは確かめられていました。しかし今回の発見は、今まさに火星に生命体が存在しうることを示しているのです。とはいえ水そのものが見つかったわけではありません。本当に液体の水は存在するのか、それはどこから由来するのか、が今後探求すべき課題となっています。