一言で説明しよう

共同通信ワシントン支局・浅見英一
(2015年度 サイコム講師)

 

サイコムで学生のみなさんにライティングのアドバイスをする際に、繰り返し申し上げたことがあります。「何について書いた文章か一言(11~12字程度)で言えるようにすること」。これを常に念頭に置いて訓練を繰り返すことで、ライティングの実力はかなり向上すると思います。

 

文章のうまい人とそうでない人をもっともはっきりと分けるのは、その長さを自由にコントロールできる能力だと感じます。一つの話を長くも短くも説明できる。より重要なのは短いほうです。一言に集約できない文章は、いくら言葉を尽くして説明がなされていてもまことに読みにくい。文章を貫くコンセプトが、できれば表題で示されていれば、それを指針にして読むことができ、内容も分かりやすくなります。

 

一言で言えてしまったら、ほかに書くことがなくなるのではと心配になりますか。その一言に込められた意味や意図を、事例を挙げながら補足説明をしてみてください。600字程度の文章ならすぐに埋まってしまいます。ちなみに600字というのは読む側の集中力が持続するちょうどよい長さです。

 

あるいは、難しい科学の概念を600字で、ましてや一言で説明することは難しいと感じますか。私はどんなことでも表現可能だと思っていますが、確かに言い尽くすことが難しい事柄もあるでしょう。でも、そんな場合でもトライしてみてください。本当に必要な説明な何か。徹底的に余分な説明をそぎ落としていく作業の中で、読みやすい文章が生まれると思います。