名誉教授随想『在職時の思い出:岡山天文台と花山天文台』

名誉教授随想『在職時の思い出:岡山天文台と花山天文台』

元附属天文台所属・名誉教教授 柴田 一成

 
 


 この3月末に定年退職しました。21年間の在職時の最大の思い出は岡山に3.8 mせいめい望遠鏡が完成したことです。実は京大着任前、海部宣男国立天文台長は「京大は国内で最も天気の良い岡山に東アジア最大の光赤外線望遠鏡を作り、天文学の拠点としての責任を果たすべき」、と言われていました。国内の光赤外線天文学コミュニティも同意見でした。しかしながら、着任直後の京大天文台も理学研究科事務方も岡山計画に大反対でした。5年後台長となった私は京大のローカルな事情よりも、学問の正義を優先させる道を選びました。事務室や執行部の皆様方には大変なご迷惑をおかけしたと思いますが、にもかかわらず応援いただいたことを感謝します。岡山望遠鏡計画に関しては、元同級生の藤原洋さんの支援が大きく、また、長田哲也教授をリーダーとする宇宙物理学教室の若い研究者のみなさんの活躍のおかげで、世界トップクラスの新技術望遠鏡が完成に至ったのは感激でした。一方、その見返りとして花山天文台を予算的に閉鎖の危機に追い込んだのは心苦しいことでした。花山天文台の見学案内などすると、「アマチュア天文学の聖地」としてのすごい歴史や、教育普及用としては世界的に価値のある望遠鏡の存在を市民の方々から教えられます。2013年には花山天文台は京都市の「京都を彩る建物や庭園」に選ばれました。これに関わった京都市文化財保護課の職員の方から、花山天文台は登録有形文化財に指定される価値があるので、市民のために京大で同意書をもらってくださいと頼まれたのですが、結局理学研究科で同意が得られなかったのは大変残念なことでした。しかし、定年直前の1月に英国のロックバンド・クイーンのギタリストで天文学者のブライアン・メイさんが私の招きに応じて花山天文台に来てくださり、未来を担う子供たちのために花山天文台が永遠に残るようにと、世界に発信してくださったのは何よりも嬉しい出来事でした。