名誉教授随想『私の研究教育人生とコンピュータ・情報通信技術』

名誉教授随想『私の研究教育人生とコンピュータ・情報通信技術』

元地球惑星科学専攻(地球物理学分野)所属・名誉教授 余田 成男

 
 


 1973年に京都大学理学部に入学して以来、学生、院生、奨励研究員、助手、助教授、教授とずっと理学部・研究科にお世話になってきました。海外特別研究員、在外研究員などで合計3年ほど京都を離れましたが、在職のままの赴任で本当に有難いことであったと、恩師、先輩、関係者の皆様に心より感謝致します。

 この間、私は気象力学・気候力学・地球流体力学の分野でコンピュータを駆使した数値実験を中⼼に研究を進めてきました。コンピュータの誕⽣以来、演算速度は約5年で⼀桁ずつ⾼速化してきましたが、1980年頃の計算機環境は、今のノートPCよりも低性能のものを⼤型計算機センターで管理運⽤し、何百⼈で共⽤するという状況でした。その頃は⾮線型科学の黎明期であり、⽀配⽅程式の線型化など行わず非線型のまま数値的に解を求めてその振舞いをもとに理解を深める、という研究⼿法が生まれつつある時代でした。

 もっとも「解ける」数値モデルは限られており、学位論文では、カオス発見の気象学者ローレンツが導出した中緯度大気を模した少数自由度非線型力学系(3~100変数)の数値解を解析しました。それから年月が過ぎ、今春終了の科研費(新学術・基盤A)では、地球システムモデル(約5千万変数)の何百年間数値シミュレーションを繰り返し、太陽活動変動の気候影響や熱帯気象の成層圏-対流圏力学結合過程を調べました。

 4月からは国際高等教育院の副教育院長/特定教授として、本学の教養・共通教育の企画と実施・評価の仕事を始めました。着任早々、新型コロナウイルス感染症拡大で、約1,500科目ある全学共通科目についても、対面式からオンライン等による授業へ切換えられたところです。昨今の先端的情報通信関連技術を駆使した遠隔授業が、この緊急事態が終息した後の大学教育にも大きな影響を残す予感がします。皆様のご健闘をお祈りするとともに、大禍なく終息した後にゆっくりとお話できる機会が来ることを願います。