松岡廣繁 本研究科地球惑星科学専攻助教、楠橋直 愛媛大学助教、イアン・コルフェ ヘルシンキ大学研究員らの研究グループは、石川県白山市の桑島化石壁(白亜紀前期の地層、手取層群(てとりそうぐん)桑島層(くわじまそう)の大きな崖)から数多くの歯化石が発見されているトリティロドン科の単弓類(「哺乳類型爬虫類」)について、これが新属新種であることを発見し、「桑島の山の口」という意味である Montirictus kuwajimaensis 「モンチリクタス クワジマエンシス」と命名しました。

 

Montirictus kuwajimaensis は、ロシアから報告されている例とともに、白亜紀前期まで哺乳類型爬虫類が生き延びたことを示す世界で2つだけの証拠です。さらに桑島化石壁は、世界で唯一、トリティロドン類が「多丘歯類」(植物食の中生代型哺乳類)と共存したことを示す化石産地です。Montirictus kuwajimaensis の命名記載によって、ジュラ紀型の「古い」動物群から白亜紀後期に隆盛をほこることになる「新しい」動物群への移り変わりの様相を探る研究が、大きく進展することになります。

研究者からのコメント

「桑島化石壁」からトリティロドン類の化石が最初に発見されたのは1997年のことでした。京都大学総合博物館(2001年開館)にもそのことに関する展示があります。それからずいぶん時間がかかってしまいましたが、この間、世界の博物館に出かけ 「自分の目で」実物を納得するまで観察してきました。既存の文献では歯の形態に関する記載が不十分で、論文を読んでいるだけでは比較研究ができなかったからです。おかげで本研究を通してトリティロドン類を歯だけで系統分類する方法が確立できました。化石発見当初の興奮とはまた違った、充実した興奮を味わっています。

概要

石川県白山市の「桑島化石壁」は、石川・岐阜・福井・富山各県に広がるジュラ紀~白亜紀の地層「手取層群」のうち、白亜紀前期に、川の流れやその周囲の氾濫原で堆積した地層「桑島層」が露出する大きな崖です。化石壁の地層の年代は、これまでの研究で、1億3000万年前~1億2000万年前と考えられています。化石壁は豊富な植物化石を産出することが明治初期から知られ、古生物学的な重要性から、国の天然記念物に指定されています。

 

1995年にチャドで猿人化石が発見され、猿人の分布がアフリカ中部に広がっていた事が明らかになりましたが、同様に大地溝帯を越えて東部に広がり猿人が棲息していた可能性が示された点はきわめて重要です。また、ケニアの南部地域で猿人化石の発見は初めてであり、カンティスは、エチオピアからタンザニアにいたるアファレンシス猿人の分布の空白域を埋めたことになります。

桑島化石壁産 Montirictus kuwajimaensis の化石
生態想像図(画:山本聖士)
 

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