スレヴィン大浜華

 

 ミモザは、真っ暗な箱の中でも朝になると葉を広げ、夜になると閉じます。18世紀にこの現象が観察されたのをきっかけに、あらゆる生物が「概日リズム」とよばれる朝夕のリズムを保つ仕組みを持っていることが明らかになりました。2017年度ノーベル医学・生理学賞は、概日リズムの分子機構を明らかにした3人の科学者、ホールとロスバシュ、ヤングに贈られました。

 

 ホールとロスバシュは、タンパク質「PER」の周期的な濃度増減が概日リズムを生み出していることを発見しました。PERは核で遺伝子「period」から作られ、細胞質に運ばれます。PER濃度が増加するとperiodの働きが抑えられ、それによりPER濃度が減少すると再びperiodが活性化する、というループが明らかになりました。

 

 では、細胞質にあるPERはどのように核内のperiodに作用するのでしょうか。ヤングは、PERを核内に運ぶタンパク質「TIM」とその遺伝子「timeless」を発見しました。ヤングは、約24時間というPERの濃度変化の周期を実現する遺伝子「doubletime」の存在も突き止めました。その後の研究で、光に応じて概日リズムの周期を調整する遺伝子など、様々な遺伝子が発見されています。

 

 最近は概日リズムと生活習慣病の関係が注目されています。例えば、マウスの実験から、ガン抑制遺伝子「p53」を持たないガン細胞は、概日リズムの周期が短いことが分かりました。概日リズムとガンの進行に何らかの関係があると考えられます。実際に、不規則な生活を送る労働者は、ガンの発症率が高いことが知られています。生活様式が多様化するなかで、概日リズム研究の重要性は高まっています。