藤田 遼

 

京都大学情報学研究科の原田博司教授の研究チームは、ローム株式会社(京都市)の研究グループと共同で、日新システムズ株式会社(京都市)の協力の下、国際無線通信規格Wi-SUN FANに対応した無線機の基礎開発に成功した。研究成果は11月に行われた組込み総合技術展に展示された。今後商用化される予定で、IoT(Internet of Things;モノのインターネット)向けのアプリケーション開発促進が期待される。

 

Wi-SUN FAN (Field Area Network) は、ガスや電気のスマートメータやインフラ、高速道路交通システムにおいて、センサーによる相互無線通信を実現できる国際無線通信規格だ。Wi-Fiのような大容量データ通信が目的ではなく、主に屋外でのセンサー通信を目的とする。そのため、長寿命・低消費電力であること、1km弱の長距離でも通信可能かつそれらを複数の無線基地局を介してつなぐマルチホップと呼ばれる通信方式に対応できることが技術的に必要とされていた。今回、原田教授らが開発した無線機は、農場など開けた土地であれば1km程度、街中でも見通しが良ければ600~700mの距離で直接無線通信が可能。20数回のマルチホップが可能で、1カ月に2000回の通信で最大10年間使用できるという。

 

原田教授はWi-SUN規格を制定・普及促進を行う国際機構「Wi-SUNアライアンス」の議長も務める。「今回の開発は、京都大学、ローム、日新システムズという3者の産学連携による純京都産の通信技術。今後、今の無線LANのように全世界でWi-SUN FANが広がるだろう」と期待を示した。