企画名

自然放射線の時系列データを読み解く
 

参加教員

教員名 所属 職名
藤井 俊博(代表教員) 白眉センター・理学研究科 特定助教
榎戸 輝揚 理化学研究所 開拓研究本部
榎戸極限自然現象理研白眉研究チーム
 
 

実施期間・頻度

令和3年度 通年

 

企画の概要

 時系列データを丁寧に読み解くことは、数理的なテーマとしてだけではなく、物理学研究における重要な解析であり、環境問題や社会問題の解決における欠かせない手法になっている。たとえば、時系列データの解析は天文学であれば、恒星やパルサーの自転周期の発見や、太陽黒点数の長期変動の観測、測定のノイズの取り扱いなど実験科学の重要な実践的テーマを多く含んでいる。時系列データを扱う多様なノウハウを学ぶことは、科学の研究者になる際の重要な武器になるだけではなく、データサイエンティストとして社会で活躍するための数理的知識な欠かせない基礎となる。

 本スタディグループでは、理化学研究所の榎戸極限自然現象理研白眉研究チームと連携し、自然放射線(環境放射線)の測定を簡単に行える可搬型の測定器を用いて、身の回りにある多様な自然放射線の時系列データを取得し、その解析を通して、時系列データの扱いを学ぶ。時系列データはさまざまな方法で既に取得されたものがウェブ上で公開されているが、すでに加工されて綺麗なデータではなく、自分でデータ取得を行い生データからの前処理を行うことも重視する。このように、時系列データの解析と解釈を軸に、MACS教育プログラムが掲げる「数理を基盤として理学5分野を横断する融合研究を推進し,狙ってもできない新たな学問分野の自発的創出」を目指す。

 今年度における活動の流れは、月に1回程度の報告会を中心に、各自で測定やデータ解析を行っていく。必要に応じて、教員との追加議論も行う。
これらの目的を達成するため、以下のような活動を実施する、

  •  可搬型のプラスチックシンチレータ宇宙線検出器(アカクラゲ)を用いた宇宙線測定の時系列データ解析を行う
  •  雷雲や雷放電からの放射線の測定を行うシチズンサイエンス「雷雲プロジェクト」の装置「コガモ」のデータに関わる解析から、降雨・降雪に伴う放射線の変動、雷雲や雷放電に伴う放射線の探索や解析を行う。
  •  理化学研究所に所属する(客員研究員も含む)研究者を京都大学へ招致し,学生が希望するテーマに関する講義・講演の聴講
  •  京都大学の学生が理化学研究所を訪問したり、短期滞在することによる研究交流
  •  その他,参加学生自らが企画する行事の開催.

 

TA雇用の有無

現在検討中.

 

問い合わせ先

藤井 俊博 Fujii*cr.scphys.kyoto-u.ac.jp
(*を@に変えてください)
 

スタディグループへの登録は締め切りました。
関心のある方は macs *sci.kyoto-u.ac.jp(*を@に変えてください)までご連絡ください。

 


活動報告

活動目的・内容

 時系列データを丁寧に読み解くことは、数理的なテーマとしてだけではなく、物理学研究における重要な解析であり、環境問題や社会問題の解決における欠かせない手法になっている。たとえば、時系列データの解析は天文学であれば、恒星やパルサーの自転周期の発見や、太陽黒点数の長期変動の観測、測定のノイズの取り扱いなど実験科学の重要な実践的テーマを多く含んでいる。時系列データを扱う多様なノウハウを学ぶことは、科学の研究者になる際の重要な武器になるだけではなく、データサイエンティストとして社会で活躍するための数理的知識な欠かせない基礎となる。
 本スタディグループでは、理化学研究所の榎戸極限自然現象理研白眉研究チームと連携し、自然放射線(環境放射線)の測定を簡単に行える可搬型の測定器を用いて、身の回りにある多様な自然放射線の時系列データを取得し、その解析を通して、時系列データの扱いを学ぶ。時系列データはさまざまな方法で既に取得されたものがウェブ上で公開されているが、すでに加工されて綺麗なデータではなく、自分でデータ取得を行い生データからの前処理を行うことも重視する。このように、時系列データの解析と解釈を軸に、MACS教育プログラムが掲げる「数理を基盤として理学5分野を横断する融合研究を推進し,狙ってもできない新たな学問分野の自発的創出」を目指す。

 

活動成果・自己評価

【活動成果】本スタディグループでは、自然放射線の時系列データを読み解くために放射線検出器(コガモ)を使い環境放射線の変動を研究した。コガモ検出器とは、0.2 – 12 MeVのガンマ線を検出する持ち運び可能な小型の検出器である。このコガモ装置を使って、雷雲通過時のガンマ線の増光を検出することに加えて、、さまざまな環境下(コンクリート遮蔽、加速器ビームの近く、恒温槽)での自然放射線を測定した。加えて、同じコガモ検出器でモニターしている気温・湿度・温度との相関を調べたところ、気圧と高エネルギー事象に負の相関があることが明らかになった。この結果は、地球大気によって宇宙線が遮蔽されている影響と一致している。
 さらには、2022年1月15日13時10分ごろにトンガ噴火時の気圧の変化もとらえることができ、この気圧の変化量からおよそ10の19乗ジュール程度のエネルギーを放出していることを明らかにした。また、手のひらサイズの放射線検出器(アカクラゲ)の時系列データ取得にも着手している。

【自己評価】熱意のある学生たちが、研究室配属に先駆けて研究を進める機会を提供できることはとても素晴らしいと感じた。教員たちとの議論を通じて、研究の進め方や着眼点、解析手法、発表資料作りおよび質疑応答といった実践的な知識を学ぶことができ、即戦力として活躍できる人材育成に貢献できたのではないかと考えている。

 

参加メンバー

氏名 所属 職名・学年
藤井 俊博(代表教員) 白眉センター・理学研究科 特定助教
榎戸 輝揚 理化学研究所 開拓研究本部 榎戸極限自然現象理研白眉研究チーム  
矢野隆之 物理学・宇宙物理学専攻 B4
渡邉大師 その他(工学部情報学科) B3