細胞を数理で描く

日時

2017年12月19日(火)14:00〜16:00

 

場所

理学部3号館110講義室
アクセス 建物配置図(北部構内)【5】の建物

 

講演

講演者 柴田 達夫氏(理化学研究所 フィジカルバイオロジー研究チーム)
タイトル 細胞シートの形態形成を数理科学で考える
概要 上皮細胞からなる組織は、細胞同士の接着を維持しながら変形や運動をすることができる。数理モデルを用いて細胞の性質と組織のスケールを関係づけて、上皮組織の形態形成を考える。
 
講演者 望月 敦史氏(理化学研究所 望月理論生物学研究室)
タイトル 生命システムの振る舞いをネットワークの形だけから決定する
概要 無数の化学反応が連結した複雑なネットワークシステムの動態から、細胞の生理機能が生まれるのだと考えられている。我々は、ネットワークの構造だけから、関数やパラメータを仮定せずに、化学反応系の振る舞い(酵素変動に対するシステムの応答、および定常解の分岐)を解析する、二つの数理的手法を発見した。具体的な生物システムの例を用いて紹介する。

  


開催報告

「細胞を数理で描く」と題して、二人の講演者に最先端の研究についてお話しいただきました。前半は柴田達夫さんで、上皮細胞シートの一方向運動をどのように数理モデリングするかという観点から複数の話題を提供いただきました。例えば、ショウジョウバエの発生途中の蛹段階で外生殖器(上皮細胞シート)が360度回転する現象が、単純な上皮細胞の形に関するポテンシャル緩和ダイナミクスと細胞接着のつなぎかえルールから現れるシミュレーションを通して理解できることを示し、そこで得られた理論的予言も説明していただきました。

 

後半は望月敦史さんで、最初に、広いクラスの化学反応ネットワークに対して、定常解に着目した場合に成り立つ「限局則」と、そこから見えてくる化学反応ネットワークの「入れ子的緩衝構造」について一般論と例題を通して説明していただきました。続いて、最新結果の一つとして「入れ子的緩衝構造」を反映した化学反応ネットワークの分岐解析手法とこれからの発展性についても触れていただきました。

 

2つ合わせて2時間を超えるセミナーとなりましたが、講演途中でも、ある専門分野を背景にもつ参加者の質問が、他分野を背景にもつ参加者の質問を促しながら、密度の高い多分野交流になりました。(文責 太田洋輝)