名誉教授随想『近況』

名誉教授随想『近況』

元地球惑星科学専攻(地球物理学分野)所属・名誉教授 中西 一郎

 
 

退職後4月から地学の授業を3大学で行った。対象は文系1年生、理工系2・3年生、理学系修士学生(集中講義)であった。その中の新入生向け授業についてまとめてみた。

 

まず問題となるのは、地学を高校で履修していない学生が多いことである。地学の内容は固体地球・海洋・気象・天文と極めて広範囲に亘る。地学現象に関する知識の羅列の連続にならぬ様、各授業1つのテーマを作り、地学現象の事例を詳しく丁寧に説明した。宿題を毎回出し1週間後に解答例を公開した。定期試験の答案に宿題の効果を見ることが出来、手応えを感じた。

 

日本では、地震や台風等による自然災害も多い。関連する報道を取り上げることもあった。6月18日の授業時に昨年の大阪府北部地震を話題にした。その晩に山形県南部沖地震が起き、次の授業でこの地震と日本海東縁プレート境界について説明した。プレート境界形成の初期過程の一瞬を垣間見たようだ。昨年7月の西日本豪雨(前線及び台風第7号による大雨)も取り上げた。

 

試行錯誤の半期を終え考えるに、新入生に地学を教えることを若い人が担ってはどうか。学位を取得して間もない教員が地学を担当し、自己の知識と視野を拡げ、その若いパワーに新入生を地学という新鮮で広く奥深い世界へ誘う役割を託したい。データサイエンスであり、領域の垣根が低くなりつつある地学の自身の研究に必ずや役に立つと考える。年を重ね、多少なりとも経験を積んだ元教員は別の道を探すことになるが、地学の教育と研究に資することが多いと期待する。