研究科長挨拶

研究科長挨拶

京都大学大学院理学研究科長・理学部長 國府 寛司

 京都大学理学研究科のHP にお越しくださいましてありがとうございます。

 京都大学理学研究科は、数学・数理解析、物理学・宇宙物理学、地球惑星科学、化学、生物科学の5つの専攻からなり、その歴史の中で、複数のノーベル賞やフィールズ賞などの大きな賞を授与される研究者が多数輩出するなど、各分野で国内外トップレベルの研究業績を挙げて来ました。また科学・技術の分野を中心に、数多くの多彩な人材を育成し、我が国の理学分野の教育にも大きな貢献を果たして来ました。近年は「数理を基盤として新分野の自発的創出を促す理学教育プログラム」(通称:MACS教育プログラム)のような学際融合分野の開拓の試みなど、新たな理学の研究と教育の実施にも力を注いでおり、その機能を担う仕組みとして、2019年度より附属サイエンス連携探索センター(通称:SACRA)を設置いたしました。

 理学は、自然現象に関する真理の探究を行うもので、自然や事物の本質について自由かつ大胆に考えを巡らし、その真理を合理的に明らかにすることを目指す学問です。世界の有様を大きく変えるような科学上の発見の多くは、自然界の真理に対する純粋な好奇心に基づく研究から生まれてきました。京都大学理学研究科の教員は皆、事物の本性や本質を見つけることに無常の喜びと幸せを感じていると思います。このような、好奇心旺盛で個性的かつ多才多様な教員陣こそが、本研究科の最も誇りとするものです。

 近年、我が国では、イノベーションの名の下に、社会に役立つ研究が求められる傾向が強くなっているように思われます。もちろん私たちも、自分の研究が世の中の役に立つことを願っていますし、国民の税金によって行う研究に対しての、しっかりした説明と成果の発信をすることも重要です。しかしその一方で、出口を目指した短期的・局所的な視点だけでは、本当に社会を大きく変えるような発見は難しい場合も少なくありません。歴史を振り返ると、大きなブレークスルーにつながる研究や発明の多くは、物事の本質に迫ろうとする知的好奇心と、それに支えられた深い洞察や大胆な発想の転換から生まれてきていることがよく見て取れます。また、そのような試みを行える気持ちの余裕と「遊び心」も必要です。京都大学の理学研究科では、自然界の現象や事実に無心で向き合い、物事の本質を見極める努力を、教員・学生が協力しながら進めていく場であり続けたいと考えております。

 

在学生の皆様へ

 理学研究科・理学部は、自由であるといわれる京都大学の中にあっても特に自由な学びができるところではないかと思います。「緩やかな専門化」という教育理念のもとで、理学5分野のさまざまな科目が用意され、また講義や演習、実験、フィールド実習、セミナーのような少人数の授業など、それぞれの分野を学ぶための多彩な形態の教育を提供しています。ぜひこれらを活用して、皆さんが目指したい専門分野、自分が好きで得意な学問領域を見つけて、それを思う存分、深めていってください。

 理学部・理学研究科で学ぶ学問分野は、それぞれが長い歴史をもち、日々新たな発見を生み出している最先端の研究につながるものです。本学理学部・理学研究科において、私は学生の皆さんに、理学の最先端を自らの眼でしっかりと見ていただきたいと思います。そのためには皆さんが皆さん自身の興味の源を見極め、それをさらに深く探求し、それによってその分野がいまどのように動いているかを感じとっていただくことが重要です。このようなことは、皆さんが自らの興味の対象に深く没入することで初めて達成されるものです。そしてこのようなプロセスを経て初めて、皆さんは理学という学問を自らの経験として身につけていただけるのだと思います。

 また、自らの選んだ学問を深めていくことで、皆さんには自身の進むべき道が見えてくるはずです。ある人は研究者としてさらに学問の道に分け入り、またある人は自らが学んだ理学を、教育の場において、あるいは科学の普及のために活かそうとするでしょう。理学の学識や知見を基に様々な場で科学技術の発展に尽くす人もいれば、自らの発想をきっかけに起業する人もいるかもしれません。本学理学部・理学研究科からはこれまでも多方面で活躍する方々を輩出してきました。皆さんもそのような先輩に続いて、理学の素養を活かした幅広い分野・場面で活躍していただきたいと願っています。
 

志願者の皆様へ

 アドミッションポリシーに記載しておりますように、京都大学理学部・理学研究科で、私たちと共に学び研究する人の輪に加わっていただきたいと願っているのは、以下のような方々です:

  • 優れた科学的素養・論理的合理的思考力と語学能力を有し、粘り強く問題解決を試みる人
  • 自由を尊重し、既成の権威や概念を無批判に受け入れず、自ら考え、新しい知を吸収し創造する姿勢を持つ人

 京都大学の理学部・理学研究科は、長い伝統を持ちながらも、それに縛られない自由で多才多様な学生や教員が、物事の本質を探究することを目指して集う場です。本学はまた、自然と歴史に囲まれながら、何度も変革の源泉にもなった京都という街にあって、我が国の学問をリードし、大きな貢献をしてきました。京都の地で、事物の根源を探究する理学という学問を目指そうという方々に来ていただけることを心から願っています。

 

教職員の皆様へ

 2020年初頭より始まった新型コロナウィルス感染症の蔓延は、本学にも例外なく大きな混乱をもたらしました。2020年度は本学理学部・理学研究科においても、その教育や研究を初めとする業務の実施に多大な困難があり、学生諸君はもちろんのこと、教職員の皆様にも大変なご苦労を強いることになりました。そのような中でも構成員の一人一人がそれぞれの立場においてしっかりとその役割を果たしていただき、教育と研究の活動を何とか維持することができました。この場を借りて、教職員の皆様のご尽力に厚くお礼を申し上げます。今後とも皆様には、ご自身の健康に十分に留意して、それぞれの業務に従事していただきますようお願いいたします。

 このような非常事態とは別に、教職員定員や予算の削減の中での仕事増が、私たち教員の本来の職務である教育・研究の質を低下させてしまうことが懸念されます。皆様と緊密な意見交換をすることで、ポストコロナの新しい理学研究科の将来像を教職員の皆様に提示できるように努めてまいります。これからもぜひ、ご提案やご意見、苦情や叱声など、現場の声をたくさんお届けいただきますようお願いいたします。

 

支援者の皆様へ

 

 これまで京都大学理学部・理学研究科に寄附などのご支援をいただきました皆様に、心より御礼申し上げます。いただいたご厚情は、学生の教育や研究の支援に、またそれを支える理学研究科の業務に活用させていただいております。その状況は理学研究科ホームページや、11月に行われますサイエンス倶楽部デイ等でご報告いたしておりますが、今後は広報活動をさらに充実させて、本学理学研究科の教育や研究の様々な展開を皆様にご報告できるように努めてまいります。

 本学理学研究科では、自然現象に関する真理の探究を行う理学研究の進展のみならず、高い科学的素養と論理的合理的思考力を身に着けて、粘り強く問題解決を行える眼力とたくましさを有する学生の育成を目指して、様々な取り組みを行っておりますと共に、さらに新たな取り組みも計画しております。その実現や、これまでの活動のより効果的な展開のために、ぜひご助力いただければと願っております。国や大学の厳しい予算と定員の削減の下で、私たちには余裕がなくなり、研究・教育の各局面で必ずしも十分なことが実施できなくなってきていると感じています。我々が実現したいと思う教育や研究の活動に対してのご理解と温かいご支援を、心よりお願い申し上げます。